長く挑発的なタイトルがついています。IMG_7476

  本書は、神戸大学大学院経営学研究科教授である著者を中心に、日本政策投資銀行が立ち上げた「センサー研究会」のメンバーの手によるもの。テーマはずばり「センサーネット構想」。
 
  ”JAPAN AS NO.1” も呼ばれたのも今や昔。
世界NO,2の経済を誇り、浮かれていた80年代の日本を尻目に、米国が選択したのは「規模の経済」を捨て「ネットワークの経済」へ移行をすること。

  今やインターネットをはじめとする様々なIT関連技術や、それらの技術を背景に生れた様々なサービスで、世界を席巻するのは米国企業ばかり。 
事実上のディフェクトスタンダードを米国に押さえられているなか、日本逆転のキーは「センサーネット」構築にあるとし、大胆な提言をまとめたのが本書です。

  ところで「センサーネット」構想とは、いったい何なのでしょうか。

  米国主導で築き上げられてきたインターネットの世界。
そこに便乗する限り、主導権を握ることは極めて難しいことです。そこで考えられるのは、インターネットに対抗、または補完する新たなネットワークを構築すること。

  それはIoTではないの?との疑問を抱かれることと思いますが、 実はインターネットには、最大の欠陥があります。
その一つは、技術的な構造上、利用する組織や個人を特定できてしまうということ。そしてもう一つはタイムスタンプ機能がないため、データの「いつか」が特定できないこと。

  そこで個人を識別しない第二のネットワークを構築し、ここにビッグデータの生成・流通を担わせることは出来ないものか。
さらにそのネットワーク上では、個人の入力やクリックが出来ないように利用制限をかけ、情報の収集は全てセンサーに行わせてしまうことができないものか。

  匿名性がない故に、ネットワーク上に自身の情報を公開するのに躊躇する方も少なくないのではないでしょうか。つまりネットワーク上に流れる情報には一定の偏りが生じていることは、想像に難くないと思います。
有効にビッグデータを利用するには、より多くの情報を集めるとともに、その恣意性を排除する必要があります。
 
  そこで有効となるのはセンサー。多くの家電メーカーが衰退する中でも、今だ日本のデバイス技術は世界有数。その技術にネットワークをつなぐことが開く世界・・・・・・.。なんだかワクワクしてきませんか。

  残念ながら、「センサーネット」はいまだ構想段階であり、本書もその可能性への提言にとどまり、具体的な姿を表すまでには時間がかかりそうですが、なかなか興味深い内容でした。

   実は本書の秀逸さは、前半部分にあります。
それは米国の産業史を丹念に追っていること。英国から多くの住民が移り住んだ移民の国、米国。
なぜに、そんな米国が英国から経済の覇権を奪い、工業大国化し、大量生産の時代を迎えたのか。日本のキャッチアップを退け、今だ世界経済を牽引する力強さを維持できるのか。
歴史的な考察を経た上での提言ゆえに、その説得力を高めているように思います。
                                                                                     

                                                                                                                                      2016- 3- 5 VOL.141