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【概要】

  日本企業や日本社会と米国系の企業や社会では、優秀な人材に求める資質やその育成方法に大きな違いがあるそうです。
それは「リーダーシップ」と「生産性」。特にその差が顕著なのが「生産性」だそうです。

  そんな「生産性」について、かつてマッキンゼーでコンサルタントと人材育成マネジャーを務めた著者が記した一冊。

  生産性の定義にはじまり、その向上のためのアプローチや意識の在り方。また著者の現職がキャリア形成コンサルタントであることから、特に人材育成については多くのページが割かれています。
  加えて実際にマッキンゼーで行われている資料の作り方や、会議の進め方も紹介されており、「生産性」につき多くの示唆を与えてくれる1冊になっています。

【所感】

  「仕事が出来る人」とは「生産性の高い人」のことであり、「成長する」とは「生産性が高くなる」ことである。
欧米企業の多くが貫くのは、そんなシンプルな信念。翻って我々の仕事ぶりはいかがでしょうか?

  「過去に例のないことだから、調査や準備に時間がかかる」「生産性を上げるとクリエイティビティが損なわれる」   
  「非効率の中にイノベーションのヒントがある」「生産性の高い組織はギスギスしている」 etc
  「生産性向上」と言われると、ついそんな言い訳を思いつく方も多いのではないでしょうか。

  生産性を高めるとは、ビジネスの目的を、最も合理的に達成すること。

  そんな当たり前のことを、本書冒頭で記された人材採用に関するエピソードが端的に教えてくれます。
どの企業でも、採用したい人数というものがあります。本来は必要な数の人材確保が出来ればいいのですが、昨今の様な売り手市場では、資料請求の数や、自社のブースへの来場者の数、面談希望者をとにかく増やすことに目的が向かいがちです。結果、仮に人は集まっても、選考から面談、そこにかかる多大な時間とコスト。
あげくの果てには、必要とする人材が集まらず徒労に終わってしまう・・・・・。

   本来なら母数を増やさず、いかに投下時間やコストを抑え、自社に合う人材に入社してもらうかが、その目的である筈なのに、我々は往々にしてこんな失敗を繰り返します。

  自身が取り組むべき業務の目的は何なのか。いかに合理的にそれを達成するのか。常にその意識を持つことこそ、生産性向上の第一歩であることを知らしめてくれた事例でした。

  生産性とは、時間やコストといった、投入資源に対し生まれる付加価値を増加させることにあります。
同じ業務を繰り返せば、習熟度は上がり、投下時間は減ります。我々はしばしばそれを生産性の向上と思いがちですが、投下資源の削減には限度があり、いつかは頭打ちとなります。

    一方、付加価値を高める方法には、無限のアプローチがありますが、細かな改善を積み重ねることよりも、むしろ改革とも言えるブレークスルーがなければ、大きく付加価値が上がることはありません。
   そんな、投下資本、付加価値、改善、改革 この4つのアプローチで考えることの大切さも本書は教示をしてくれています。

  ホワイトカラー職であっても、業務にタイマーを活用するなど折々に細かなハウツーも盛り込まれた本書。
もうすぐ新年。新しい年から新しい働き方を考えるには最適の好著。お正月休みに是非いかがでしょうか。