2017- 1-29 VOL.188IMG_9763

【概要】

 「しがらみ」 

  何気なく口にする機会も多いかと思いますが、果たして本来はどんな意味があるのでしょうか。

   デジタル大辞泉によれば、「しがらみ」とは「水流をせき止めるために、川の中にくいを打ち並べて、それに木の枝や竹などを横に結びつけたもの」「 引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの」とあります。

  本書では、「しがらみ」を「組織ないし企業において、成員の思考や行動を縛り、組織の存在意義ないし企業価値に照らして、合理的な判断を阻害する組織ないし企業内の制度や慣行および、そこから生まれる常識、ひいては文化として内部に定着しているもの」としています。

    プライベート・エクイティファンドの代表を務める著者が、投資先企業選定にあたり、多数の企業を調査する中で見えてきたものは、悪しき「しがらみ」が企業や社員のポテンシャルを抑え込み、企業価値の向上を阻害しているということ。裏返せば、その「しがらみ」を解きほぐせば、企業価値は間違いなく向上するということ。

  本書は、そんな「しがらみ」をマネジメントする方法につき提唱をした1冊。古くて新しき「しがらみ」という課題解決の一助を目し記されています。

【所感】

  誰でも一度や二度は必ず感じたことのある「しがらみ」。
読み進めるうち、「あ~分かる、分かる」と思われる箇所も多いのではないでしょうか。しかしその範疇はあまりに広く、また良き企業文化としての「しがらみ」もあるわけで、その定義は実は難しいものがあります。
そこで本書では、一つの目安として悪しき「しがらみ」がもたらす6つの課題を挙げています。
 
 ①意思決定面での課題-「社長」がボトルネックに
 ②人事面での課題-社員のモチベーション低下のリスク
 ③事業面での課題-既存事業の罠
 ④経営管理面での課題-勘と経験がもたらす弊害
 ⑤組織運営面での課題-部門間のシナジーを低下させる「サイロ化」
 ⑥マインドセット面での課題-能動的成長志向の欠如

 そしてその対処として3つのプロセスを紹介しています。
 
 ①Redefine 価値命題の再定義-企業価値向上のビジョンと実行戦略の構築
 ②Reconnect 関係性の再構築-ステークホルダーとの関係を前向きに再構築する
 ③Explore 実践知プロセスの高速回転-具体的な実行、アクションを起こす。

  具体的には、当事者の意識改革。勘と経験による経営からの脱却。公正な人事評価制度などがポイントとなるようですが、その要諦は計数に基づいた客観性、透明性の高い科学的アプローチの継続と言えそうです。
また組織や集団を変えるのは「わかもの よそもの ばかもの」と言われますが、異種なものを取り込む組織風土の醸成も不可欠な要素かもしれませんね。

 上記のプロセスは、やや抽象的で具体策が分かりづらいかと思いますが、本書では著者達の支援した3企業の実例も紹介されていますので、自社の実態に照らし合わせてみることで理解も深まるのではないでしょうか。

 プライベート・エクイティファンド代表が著者ということで、営業的な色合いは差し引いて読む必要がありますが、考えさせられる1冊。
「しがらみ」からの脱却の第一歩は、個々人の意識と行動を変えていくことに他ならない。けだし真実と思います。