IMG_98432017- 2-12 VOL.190

【概要】

    業界屈指の戦略コンサルティングファーム、マッキンゼー。
本書は、同ファーム内の独立シンクタンクであるMGI(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)のディレクターたちによる近未来予測本です。

  本書が凡百の未来予測本と異なるのは、全世界にちらばる同ファームのコンサルタントが、日々クライアント企業や政府機関との議論の中で得たさまざまなミクロの洞察の積み重ねをベースにしていること。
そこへ学術的なデータを重ね合わせることで、より説得力ある内容にまとめあげられています。

  10章から構成される本書。
前半4章は ①経済の重心の移動 ②テクノロジー・インパクト ③地球規模の老化 ④「流れ」の高まり という本書副題ともなっている4つの破壊的な力について取り上げています。

  後半6章では、この4つの破壊的な力の影響から生じる、解決すべき6つの課題として ①巨大な中間層の出現 ②資源価格の変動 ③資本コストの上昇 ④労働力需給のミスマッチ ⑤新たな競合の出現・競争ルールの変化 ⑥国家政策 を掲げています。
 
  なかなかボリュームのある一冊ですが、マクロな具体的事例が多く盛り込まれていることから、比較的読み易い構成となっています。


【所感】

  本書で繰り返し出てくるキーワードは「直感のリセット」。

  現実の変化は、我々の想像や常識を優に追い越してしまっており、我々が過去の経験から蓄積された直感に基づいて意思決定をしてしまうと、かなりの確率で間違う可能性が高いのだと警鐘を鳴らしています。

   本書の目的は、大きな変化の潮流の中で、これからの10年間に求められる経営の要件を明らかにすることにあります。その提示される要件には、しばしば我々の過去の考え方にはそぐわないものも散見します。
 そのそぐわなさの認識こそ、我々の「直感のリセット」を促すものであり、著者たちの意図もそこにあるのではないかと感じました。

  興味深いテーマの多い本書ですが、個人的に期待して読んだのは、後半④の労働力需給のミスマッチについて触れた章でしょうか。

    近年、特に先進国では経済回復が雇用増、給与増に結び付かない現象が顕著に起こり始めています。
それは我が国でも顕著。成熟経済下では、就業機会の増加は、複雑な問題解決型の「インタラクション」業務であり、同じルーチンを繰り返す生産及び定型「トランザクション」業務ではありません。

  問題解決といった高度なスキルを持つ人材が不足する一方、低スキル人材は就業機会が不足する傾向はより高まりますが、かといって身につけたスキルもすぐに陳腐化をしてしまう時代ゆえに、このギャップ解消は非常に困難を極めるように思います。
  事実、本書では新しい人材源の確保、技術の見直し、職務を分解し互いに訓練をすること、教育に積極的に関わることなどを提唱していますが、どれも決定力には欠き、本章末でも結局は不断の教育の継続と各種スキル維持が必要だとまとめているに過ぎませんでした。

  実は他の章において提示された課題についても、本書は明確な解決策をあたえてくれるものではありません。
事実とその解釈を提示する中で、我々自身の考え方を柔軟にし、既存の枠にとらわれない発想や行動の必要性を繰り返し問うているというのは先ほどお伝えしたとおりです。

   とはいえ、それが本書の価値を貶めていることはなく、大いに刺激を受けることは間違いなしの一冊。
今後のビジネス潮流を知る上では、経営者を含めビジネスパーソン必読の書というのも、納得の内容です。
 
  さて本書に登場する、様々な破壊的トレンドを読んでも、悲観することなく、楽観主義でいることが大切だと巻末で著者達は述べています。
(過去の経験則、自身の習慣や価値観が揺らぐ)感情(悲観論になりがち)を乗り越えることこそ「直感のリセット」であり、結局は楽観主義が時代を制するのだからと結ばれています。