IMG_98592017- 2-19 VOL.191

【概要】
 
  すべてのモノとコトをインターネットにつなげて社会インフラを変えていく技術革新 IoT(Internet of Things)。第4の産業革命とも言われるIoTにより生み出される新市場は少なく見積もっても全世界で360兆円とも言われているそうです。

  AI、ハイエンドサーバー、ITサービス、自動運転で独走する米国。一般家電、太陽電池、液晶等の電子デバイスで存在感を高めつつある中国。そんな米中のはざまで日本はどう戦っていくのか。

  本書は「半導体産業新聞」編集長にして、長らく半導体業界を見つめてきた著者が読み解くIoT革命の行方。
  
  著者は、IoTには3つのポイントがあると説いています。

 ①人を介在させない ②あらゆるものがネットワークに ③フルカスタムの社会へ 

   ②はイメージしやすいかもしれませんが、①の「人を介在させない」とは、人の手を介さず各種のセンサーが人に代わる役目を果たすようになること ③の「フルカスタムの社会へ」は②と矛盾するように感じますが、実はIoTの肝は自律型かつ分散型であり、今後企業が使用するシステムや生産設備は個別にオーダーメイドで構築されるようになるそうです。

  実はこのセンサーの分野において世界で圧倒的なシェアを抑えているのは日本。また個別のオーダーメイドのモノづくりこそ、日本がもっとも得手にする分野であり、IoT革命は日本のメーカーにとって、国際競争力を取り戻す追い風になると語る著者。

  先端技術に関する取材と長年の記者経験に裏打ちされた洞察と提言をまとめた一冊。ちょっと総花的な面がなきにしもあらずですが、興味深い内容となっています。

【所感】
  
 1990年代前半、DRAMなどの半導体市場で圧倒的なシェアを誇った日本。
またテレビ、ビデオ、オーディオ etc メイドインジャパンを代表する製品として世界を席巻した家電品の数々。
それも今や昔。日本の電機メーカーの凋落ぶりは目を覆うばかり・・・・・。 多くの方が、そんな印象を持たれているのではないでしょうか。

  ところが電子デバイス、特にセンサー分野に目を凝らすとこの認識は大いに変わります。
イメージセンサーで圧倒的なシェアを持つソニー。温度センサーのチノー、振動センサーの日本電産 他にもTDKや村田製作所など。
  センサーではありませんが、サムソンと互してフラッシュメモリーで、トップシェア争いを繰り広げる東芝(分社売却に揺れてはいますが)。世界でトップシェアを誇る日本企業の先端技術が続々と紹介されています。

   また自動運転が着目される自動車市場やロボット市場といった個別の産業分野にも章を割き、IoT革命が日本のメーカーに多大な恩恵をもたらす可能性を著者は指摘しています。

  さて日・米・中国の戦争と銘打った本書。著者は米中についてこんな見方をしています。

  軍需からの技術転向で圧倒的な強みをもつ米国が当面IoT革命を牽引するのは間違いなさそうですが、ファブレス化が進展しており、実際のモノづくりの面では、日本にチャンスがあること。

   中国については、(ちょっと見下した感はありますが)基本は廉価なコピー製品しか作れないし、国内雇用を守るためには製造現場の極度な省力化は進まないのではないかと推測をしています。ただ国家を挙げて巨額な資金投入による企業買収が行われる脅威はありますが、真に高度な技術は軍事、政治的な面から国家レベルで阻止される可能性が高く大事に至ることはないのではないかと記しています。

  IoT革命において、日本の優位性が高いことを知らしめてくれた本書。たしかに勇気づけられる内容ですが、やや楽観主義的すぎる感はあります。日本の抱える課題点など負の要素にも踏み込むことで、日本の進むべき方向性や戦略などをより鮮明にできたのではないかと思うのが、少々残念でした。