2017- 3-12 VOL.194IMG_9934

【概要】

 中川政七商店 http://www.yu-nakagawa.co.jp/top/#
享保元年に創業。奈良に本拠を置き、創業以来手摘み、手織りの麻織物を扱う企業です。

   300年もの歴史を持つ老舗ながら、独自性のある戦略によって競争に成功した日本企業や事業部に贈られるポーター賞(一橋大学大学院国際企業戦略研究科が運営)を受賞 。

http://www.porterprize.org/pastwinner/2015/12/15104405.html
  
  取り扱う商品のみならず、そのユニークな経営から、最近は多くのメディアに登場しているので、ご存じの方も多いかもしれませんね。

   さて本書は、そんな同社13代目の当主が語る自社の経営と将来へのビ思い。実は当主はまだ40歳代、同社に入社して15年。経営トップに就いて9年目の若き経営者です。
300年の歴史があるとはいえ一地方企業であり、扱う商品は麻生地と茶巾や袱紗といった茶道具など。自社ブランドを持つものの、いわゆる家業の域を出ない、ごくありふれた企業に過ぎなかったようです。
 
  多くの中小企業経営者の方の頭を悩ます「ファミリービジネス承継」 「地方企業」 「地場産業の衰退」etc といった問題の数々。本書を読まれれば、著者の奮闘ぶりに共感を抱かれる方も多いのではないでしょうか。
そしてその取り組みのいくつかには、必ずや業種や事業規模や超え参考になる点も多いかと思い、今回ご紹介をさせていただくこととしました。

【所感】

    本書のタイトルでもある「日本の工芸を元気にする!」  これは中川政七商店のビジョンでもあります。
2003年、当時唯一の自社ブランドで玉川高島屋ショッピングセンターに出店した同社。著者はそこである経営者に出会い「何のために会社を経営しているのか?」と問われます。
自問自答を繰り返す中で、著者がたどり着いたのが同ビジョン。自社商品の展開だけでなく、自社と同じように各地域工芸の分野でがんばる企業を支援すること。

  そこで氏は、業界特化型のコンサルティング事業に取り組み、産地再生を図る地域でいくつかの企業再生に成功します。また単にコンサルティング活動にとどまらず、実際に支援した企業が販路を確保できるよう、「大日本一」という展示会を開催。また、優れた地域の工芸品販路でありながら、ややもすればおざなりがちであった土産物屋に着目。「仲間見世」という形態で、観光地での新しい売り場を展開しています。

  一方で自社の改革も進めます。家業から脱却すべく、ごく当たり前の管理を取り入れようとするも、古参社員は続々と退職。残った社員にも伝わらない思い・・・・。
試行錯誤を重ねつつ、一歩ずつ理想の経営を目指す著者。そして断念はしたものの、いつしか上場を狙える企業にまで同社を発展させていきます。
 
  自身の経験談をただ連ねるのでなく、ブランドマネジメント、クリエイティブマネジメント、ビジネスモデルといった経営管理手法の目線も加え、普遍性をもたせていることで、とても読み易い構成となっている点は、さすがコンサルティング業務も展開されているだけのことはあります。

  さて示唆に富んだ本書ですが、個人的に一番飲食に残ったのは、経営者自身がクリエイティブのリテラシーを養うのと同時に、経営を理解するデザイナーを選ぶことが重要というくだりでした。

  多くの中小企業が欲するものに、自社ブランドや自社オリジナルの商品やサービスがあると思います。
その創造に欠かせないがクリエイティブマネジメント。創作を理解できない経営者の元では、当然こういったものが生まれる余地はありません。とはいえ創造的であれば、センスあるものであれば採算度外視でよいかと言えば、それもあり得ない話です。双方の歩み寄りと理解があって成り立つこと。
   これは工芸に携わる著者ゆえに強く意識をされているのかもしれません。ややもすれば 「いいものを作れば誰かが分かってくれる。求めてくれる。」 という発想に陥りがちそうなモノづくりの世界。

 「日本の工芸を元気にする!」とは、持続するために経済的に自立可能な仕組みを作ること。
それこそ著者が自社のビジョンや本書タイトルに込めた思いなのかもしれませんね。