2017- 3-19 VOL.195IMG_9969

【概要】

  UAE(アラブ首長国連邦)  アラビア半島のペルシア湾側に位置する7つの首長国からなる連邦国家です。
サッカーファンの方なら国名そのものを、旅行好きの方であれば、ドバイやアブダビを擁する国家として、その名前を聞かれたことがあるかもしれません。 
  しかしながら、ほとんどの方にとってUAEは、中東にある産油国の一つであり、実情はよく分からないというのが正直なところではないでしょうか。

 本書は、このUAEで日本の特命全権大使を務めた著者が語る同国の実像。国家の概要から歴史。地政的リスクや日本との関連。そして同国におけるビジネスの可能性まで、幅広く網羅をしています。

【所感】

  世界一高いビル、ブルジェ・ハリファ。世界最大のショッピングモール、ドバイモール。世界最大の人工島パーム・アイランド。現代都市と砂漠が融合した独特の景観の映像を、ご覧になった方も多いかもしれませんね。

  産油国であることは説明の必要はないかと思いますが、実に日の丸油田の40%以上が集中している地域であることや、世界最大級を誇る政府系投資ファンド、アブダビ投資庁がある金融大国でもあること。
  総人口1,000万人とも言われますが、実は自国民はほんの100万人程度。9割は外国人いう開かれた労働環境。そして所得税課税はなし。
また教育費や医療費は無料であり、結婚すればマイホームがプレゼントされるなど自国民に対する破格な厚遇。

  知られざるUAEの特色が次々と明らかにされる本書。
もちろん魅力的な話ばかりでなく、民主制を引いていないことや地政上のリスク、居住者間の経済格差、外貨は呼び込むも国際競争力のある産業は乏しい等、欠点がないわけではありません。

  それでも著者はUAEの理解と積極的な進出を説いています。
UAEの最大の石油輸出国は日本。つまりUAEの繁栄を支えたものはジャパンマネーですが、その巨額の資金は、アブダビ投資庁等を介し欧米へと流れており、日本への還流はほとんどありません。
同国に外国人居住者が多いということは、外国人に広く就業機会が開かれており、欧米はうまくその流れに乗っているのに対し、日本のUAEに関する無関心さや、最大の購買者である立ち位置をうまく活用しないもどかしさが本書を執筆した動機のようにも伺えました。

  とはいえ、具体的なビジネスの可能性についてはさほど言及されておらず、ホテル業界、日本料理、日本文化や伝統の普及、デザイン等が有望とあるだけで、どちらかと言えば個人としての就業に関する色合いが強いように思いました。
  石油産業プラント産業、建設業が以前から進出しているのは、もちろんですが、近年は紀伊国屋書店、ダイソー、無印良品、ヨックモック等が進出し人気を博していますので、いまや業種を問わず進出のチャンスは多いのかもしれませんね。

  やや総花的な面は否めない本書ですが、UAEに対する入門書としては十分な内容ではないでしょうか。