2017- 5-14 VOL.203IMG_0390

【概要】

  「出勤・退勤時間は自由」「休みたければ会社に連絡せずに休んでOK」「有給休暇も事前申請不要」「嫌いな作業はやらなくてよい」 etc

  常識やぶりの取組みで、様々なメディアがこぞって取り上げる ㈱パプアニューギニア海産 http://pngebi.greenwebs.net/ 
同社は大阪にある、総員11名ほどの小さなエビ加工会社です。

本書は、同社創業者のご子息にして工場長を勤める著者による一冊。

  まさに 「フリースケジュール」とでも言うべき同社の働き方は、いかにして生まれたのか。実際にはどのように運営され、どのような効果をもたらしているのか。課題や問題はないのか。
  5章にわたり、著者の思いと同社の様々な取組が明かされています。

【所感】

  同社は、元々は宮城県石巻市にあった会社でした。ご多分に漏れず、同社も東日本大震災で被災し全てを失います。福島第一原発事故もあり、東北での再建を断念した著者は取引先の計らいで、大阪府中央卸売市場内で事業の再興を決断します。

  被災地を離れた同社には、行政からの支援は一切なく、二重債務を抱えてのスタート。
不慣れな地で、パート社員集めに苦労をし、やっと集めたものの離退職者も絶えず、職場に二つも三つも派閥の出来てしまう始末。

  パートさんとの面談を繰り返す中で感じた「誰もこの会社のことを好きではない」との確信が、著者を突き動かします。子育てや介護など時間的な制約の多いパートさんたちにとって働きやすい職場とは、どんな職場なのか。著者のたどり着いた結論は「好きな日に休める会社」。

   その原型は家族経営の会社にありがちな親族の働き方にありました。
親族に対し子育てや私生活を優先した出勤形態を可能としているのは、親族ゆえにお互いの状況が分かっており、互いに融通しあいながら仕事を進めることが出来るから。そしてその根底にあるのは双方の信頼関係。
親族に対しては当たり前に行われているそんな雇用慣行を、普通のパートさんにも取り入れてみること。そんなことが「フリースケジュール」へと繋がる発端だったようです。

  具体的な取り組みや、ルールの決め方など、仔細は是非本書をご参照いただきたいのですが、一連の取組が同社にもたらしたものは、品質・作業効率の向上と、離職率・人件費率の低下でした。

   会社の規模が小さいから。パート社員だけを対象にしているから。冷凍(エビ)の加工を主業務としているから。同社の特殊性ゆえに、このような働き方が可能なのだとの批判がない訳ではないそうですが、まずはこのような取り組みが実際に行われているのだという事実は、十二分に称賛に価するものだと思います。

  「働き方革命」なるものが声高々に叫ばれつつも、具体的な施策の提示がほぼされてない現状に一考を与えてくれる本書。

 「 自由にすることが重要なのではなく、自由にする信頼関係を作る工程が重要なのだ。」
示唆に富んだ本書ですが、著者のそんな言葉が個人的には一番印象に残った一冊でした。



                                   イースト・プレス 二〇一七年四月二四日 第一刷発行