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【概要】

  岩手県花巻市。宮沢賢治の出身地でもある東北の市に、かつてあった「マルカン百貨店」 http://www.marukan-group.jp/shop/department.html 

   昨今の流通不況で、かつて賑わいをみせた地方都市の百貨店やスーパーが次々と閉店される中、同百貨店も耐震構造不足や施設老朽化を理由として、2016年6月に閉店をしています。

  同百貨店の6階には、「マルカン大食堂」と呼ばれる食堂がありました。
高さ25㎝10段巻のソフトクリーム(表紙写真)や、昭和な雰囲気を今に残す同食堂の存在は多くのメディアでも取り上げられ、全国的な知名度も高かったので、ご存じの方も多いかもしれません。

  百貨店の客数が減り続ける中、比較的賑わいを見せていた同食堂も、百貨店の閉店と共に、その姿を消すこととなりました。
  
  ところが同食堂は、2017年2月。奇跡の復活を遂げ、営業を再開します。   
 http://www.city.hanamaki.iwate.jp/kanko/702/p007655.html

  本書は、そんなマルカン百貨店の閉店から、マルカン大食堂復活まで、概ね一年間の道のりを追ったドキュメント。 花巻市に限らず、大半の地方都市では、人口減少や地域経済の低迷、郊外型店舗の増加により、かつては町の経済の中心的な存在であった商業施設や、商店街が次々と姿を消しています。

  そんな中、地域の商工業再活性を試みようと日々奮闘されている方々へのエール。はたまたヒントになればとの思いから、「マルカン大食堂」復活に向けた一連の取組の記録として、本書を記したと著者は語っています。

【所感】

 43年の長きに渡って営業を続けた同デパート、同食堂の閉店は、地域の人々に衝撃を与えます。
自分たちが昔から通い慣れ親しんだきた町の象徴とも言える施設が無くなってしまう喪失感。また全国的に認知度も高まり、ある種観光名所化していた施設を失う経済的な打撃から、一層地域経済の冷え込みに拍車がかかるのではないかとの不安。

  様々な思いが交錯する中、まずは地元の高校生たちが存続に向けた署名活動に動き出します。
時を同じくして、地域の老舗材木店の代表取締役が代表を兼任する、花巻家守舎というリノベーション事業を営む法人が、同食堂の引き継ぎ運営に名乗りを挙げます。

  〇公的資金に頼らず民間主導でしっかり儲けを出す。
  〇1不動産物件ではなく、半径200mくらいのエリアで勝負する。
  〇エリア内の遊休不動産を有効活用し、エリア全体のプロデュースを図る。
  〇先にテナントを見つけて見込める家賃を確定させ、その家賃の5年分以内で必要なリノベーションを行う。

  等の手法を学び、既に自身の母体企業で所有する不動産のリノベーションを行っていた同社でしたが、「マルカン大食堂」再生は一筋縄ではいきません。

  耐震補強、設備更新だけで6億円にも達する費用。 当初出店を約束も、予想以上に補強費用が反映され
高騰化した初期費用に二の足を踏むテナント企業。食堂運営委託を見込んでいた企業の辞退。 etc

  様々な困難が襲います。しかし臆することなく、テナント誘致を後回しとし、食堂のみ稼働可能な補強に留め初期費用を削減。駐車場の一括賃貸を図り固定収入を確保。それでも不足する分は、クラウド・ファンディングで補うなど、知恵を絞った対処を行います。また地域企業は再開応援商品などを作って、盛り上げに寄与します。

  結果、閉店から1年を待たず、無事事業再開を遂げ、閉店前を上回るお客様を集めているそうです。
取組の仔細は、時系列で整理をされていますので、是非本書をご参照いただきたいと思います。

 「マルカン大食堂」という全国的にも知られた施設であったこと。再生をリードした地場企業と優秀なリーダーの存在。本書のタイトル通り、本事例は「奇跡」であり、どの地域にでも当てはまるものではないとの印象を持たれるかもしれません。
  ただ結局、地域再生の成否は、やはりその地域の方の思いの強さに他ならないのではないか?と本書を読んで強く感じました。行政主導、補助金頼みではなく自らが当事者との意識を持つこと。再生なった施設で積極的に消費を図ること(図れるような再生であること)。そして投資には経済的な合理性があり持続可能であること。

   これは地域再生のみならず、全ての施策に共通すべきことかもしれませんが。
 
  

                                                                                                            双葉社 2017年5月21日 第1刷