2017- 7- 9 VOL.IMG_0767211

【概要】

   コンサルティングファーム、ボストンコンサルティンググループ社長を経て現在は自身で創業したドリームインキュベータの代表取締役会長を務める堀紘一氏の著作。

  元マッキンゼーの大前研一氏と並び日本における戦略コンサルティング黎明期を牽引した人物であることはよく知られているところです。
  
  35年以上に渡り経営コンサルティングに従事してきた堀氏が、自身の集大成として戦略についてまとめた一冊。

  変化の激しい世の中にあっても経年劣化しない戦略。それこそが「戦略の本質なのだ」と語る堀氏が、その思いの丈をぶつけています。

【所感】

 4章からなる本書。「戦略の基本常識」、「競争戦略」、「成長戦略」、「戦略の立て方」で構成されています。

 1章の「戦略の基本常識」では、(日本の)戦国時代、ローマ時代、太平洋戦争など過去の歴史を紐解きつつ、負けないこと(自滅しないこと)が戦略の前提であること。戦略と戦術、戦闘の違い。兵站の確保や情報を制する重要性等を説いています。

  そして2章、3章では現代のビジネスを舞台に、業界内のポジションや市場の違いにより取るべき戦略の類型を明かしつつ、イノベーターは必ず業界外からやってくることや、スピードを問われる現代にあっても、攻めの戦略の基本はロールアウト(面で戦う)であることなどが説かれています。

  実は著者自身が「本書を読んで、決まった答えやノウハウを求める人には拍子抜けした気分になるかもしれない」と語っているように、個々のエピソードは興味深いものの、何か体系立てた構成となっているわけではありませんので、一読しただけでは、なかなか理解しづらい点は否めませんでした。

  唯一体系だって整理されているのは終章で紹介されている戦略立案に必要な ①観察力 ②連鎖思考力 ③質問力 ④(相手の行動を読む)想像力 ⑤(相手の意表を突く)創造力という5つの力でしょうか。

  中でも重きを置くべきは、②と③だと堀氏は説きます。
創造力には先天的な要素も大きく培うことはかなり難しいが、質問を繰り出し得た答えを元に、次の質問を考え連鎖して思考することは、訓練次第で十分会得可能なものであり、その繰り返しで正解に近づいていくのだとあります。そしてそんな知的対話を楽しめる人は、優れた戦略家になれる可能性が高いのだとも説いています。

  先ほど、本書は一読しただけでは、理解しづらいと記しましたが、思えばこの対話こそが本書の読み方を端的に教えているのではないかとふと思いました。
著者の記す意図を考え、自問しつつ読み進める。答を得られればまた新しく自問をし読み進める・・・・・。

  「戦略の本質」につき安易に答を得るのではなく、自ら気づき考え実践するためのヒントを散りばめた構成と考えれば、本書は極めて有益な一冊と言えるのかもしれません。


                                        PHP研究所 2017年7月4日 第1版第1刷