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【概要】

 チーズ専門店「チーズ王国」「フロマジュリー・ヒサダ」 http://www.cheese-oukoku.co.jp/shop-guide/ を展開する株式会社 久田。この地域では名古屋駅の名鉄百貨店メンズ館B1Fに店舗がありますので、ご存じの方も多いかもしれませんね。

  40年前、同社を創業し現在は代表取締役会長を務める著者。
母子家庭に育ち、経済的困窮から高校を中退。地元の老舗割烹に就職も3年で上京し寿司職人に転じます。その後伊勢丹商事でサラリーマン生活を送った後、独立開業。選んだのは飲食業、当時まだ珍しかったクレープ屋さんでした。

   その後、業態を変え、チーズ専門店へとシフトをし現在に至ります。
徒手空拳で事業を展開した著者が、絶えず考えてきたことは「大きな会社と戦って勝つにはどうしたらいいのか」ということ。そんな思いと経験から学んだビジネスのヒントを若い世代、特に起業を考えている人に向け、まとめられた1冊。 起業、戦略、人材、継承という4章で構成されています。 さほどボリュームのない本書ですが、著者の熱い思いの込められた1冊となっています。

【所感】
  
  著者の経歴を見ても分かるように、何か明確な目的を掲げて職業選択をし、起業に至ったわけではなさそうです。ビジネスチャンスは人との出会いとご自身も挙げている通り、ターニングポイントになっているのは、他人からの依頼や相談。
 
  起業のきっかけも当時、著者の住んでいた立川に出来る駅ビルで何か店を出さないかとの親族からの声掛けでした。出店を決めてから、どんな店を始めたらいいのかリサーチを始めており、ビジネスのセオリー的にはとても危ういスタートだったと言えるのかもしれません。

  それでも非凡であったのは、当時さほど認知されていなかったクレープに着目をしたこと。そして作り置きはせず、新鮮な生の果物や野菜を使用し、その都度焼き上げるオリジナルなスタイルを貫いたこと。
追随する低価格指向の店舗が表れても、値引きには走らず品質面でも妥協せずリピーターを増やし続けることで経営を軌道に乗せていきます。

  そんな著者が、次に選んだのはチーズ専門店。今やスーパー等でも様々な種類のチーズが売られていますが、当時はそのように食べ分ける習慣などない時代。
最初は商社経由で品揃えを始めますが、やがて飽き足らず直接買い付けを始め、ついには自社オリジナル商品を製造してもらうまでに至ります。

  実は本書で、小さい会社が大きな会社に勝つために必要なこととして再三著者が発しているのはオリジナリティの大切さ。品質面で妥協をしないこと。つけた値段に自信を持ち、値引き販売をして定価販売で購入したお客様を裏切るような行為をしないこと。

  出店に関しても、いたずらに規模は追わず、自社のビジネスをきちんと理解した専門家たる人材が育ち、そんな見込んだ人材が活かせる店を出店するように心がけていると語っています。

  商品しかり、人材しかり、手間やコストをかけ、時間をかけオリジナリティを磨く。
大手を含め他者が二の足を踏むような立ち位置を作ることこそ、小さな会社が大手に勝つ秘訣。本書を要約するならそんなまとめとなりそうです。

  起業家向けに記したとありますが、実は本書には財務面や資金調達、プロモーション等に関する記述は、まったくありませんので、こういった面を期待して読むと物足りなさを感じるかもしれません。
実務的な話よりも、起業家、経営者のあるべきマインドセットはいかなるものか?それが本書で著者が一番伝えたかったことなのでしょう。                                                    
                             
                             日経BPコンサルティング 2017年7月3日 初版第一刷