2017- 8-13 VOL.216IMG_0874

【概要】

  2005年、愛知県で初めて設立されたNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」。http://www.momobank.net/
  2007年より融資事業を開始。法人や個人あわせ約540の出資者を集め、その後10年間で地域の課題解決に挑む60の事業者に融資を実施しています。その金額は1億4,000万円。その間、貸倒となり回収不能となった先は一件もないそうです。

  またNPOバンク設立の8年後の2013年には、更なる事業者支援のための施策として公益財団法人「あいちコミュニティ財団」http://aichi-community.jp/ を立ち上げています。

  本書の著者はそんなNPOや財団の代表理事を務める木村氏。
「 地域の人々から集めたお金を、地域をよりよいものにするための事業に生かす。」
そんな「お金の地産地消」の必要性と可能性について実例を通じ綴った1冊となっています。

【所感】

  母子家庭に育ち奨学金を得て大学を卒業。日本を元気にするような情報発信をしたいと新聞記者を志すも頓挫。地元に帰って「地域貢献」を理念にあげる名古屋の地方銀行へ就職をしますが、金融機関の実態を知るにつれ、自身の仕事に疑問を持ち始め、わずか1年半で退職をしてしまいます。
 
  なぜそんな彼が今のような仕事に携わるようになったのでしょうか?
詳しくは是非本書をお読みいただきたいのですが、とある研修プログラムを通じ、一つのNGOと出会ったことが彼のターニングポイントになったようです。

    さて6章からなる本書。1章ではNPOバンクや財団の概略に触れ、2章ではNPOバンク設立までの経緯と実際の運営内容について記されています。3章では財団設立の経緯、4章では著者達が融資や支援を実施しているNPO等に求める運営の姿勢などについて触れています。5章では支援先8事業者に関する事例紹介。そして終章ではこれからの活動展開について思いの丈が綴られています。

  NPOと聞くと、なんとなくボランティア活動のイメージが強く、果たしてそれを主宰して食べていけるの?そもそも非営利じゃないの?と、あまり知識のない方(私自身もそうですが)は思いがちですが、そんな素朴な疑問への回答も含め、NPOバンクや、財団の活動実態について丁寧に記されています。
 
  個人的に興味深く読んだのは、実際の融資審査の姿勢です。融資上限は500万円。審査に立ち会うのはなんと30名もの理事やボランティアスタッフ。
  資金借入申込書に加え、事業内容説明書を提出してもらい審査を進めるそうですが、なんと88項目ものチェックリストがあるそうです。
  同バンクの運営資金は、基本的には、彼らが「志金」と呼ぶ支援者からの出資金や寄付。自身の資金ではないだけにきちんと説明責任を果たすためにも、徹底した審査を行っているそうです。

  また支援先もNPOだから儲からなくてもいいわけではなく、持続するためには当然一定の収益や継続した信金調達の術を確保しなければ立ち行かないのは当たり前。
  そこまでの厳しい姿勢で臨むことで、結果同NPOバンクが融資をすることが、一般の金融機関融資の呼び水となったり、中期経営計画を見直すきっかけともなっているようです。10年間で60の事業者への融資というのは決して多い数ではありません。しかしここまで手間をかけていれば、その数にも納得です。それゆえ貸倒が0件という実績を生んでいるのでしょうね。

  他にも示唆に富んだ事例に満ちた本書。 地域のお金を地域で使うとは、ある意味その調達や使途をより明確にしていかなければなりません。それゆえお互いが真剣にその使い道を考える。そんな意識革命こそ、これからの我々に必要なもの。そんなことを感じた1冊でした。  
  

                                        英治出版 2017年7月10日 第1版第1刷