2017-10- 8  VOL.224IMG_1235

【概要】

 AI、IoT、ビッグデータが世界を変えると言われて久しい昨今。単純労働のみならず、その流れは医師や弁護士といったいわゆる専門職にも多大なる影響を及ぼそうとしています。

 医療、教育、宗教、法律、ジャーナリズム、経営コンサルティング、税務と監査、建築といった9業種の現況を紐解きながら、これら専門職の未来を大胆に予測した本書。

 イギリスはオックスフォード大学の権威の手による本書。

当ブログ執筆の私自身が、上記に掲げられた9種のうちの1つの業種に携わる者として、真摯に読ませていただきました。

 さしたる根拠に乏しいまま AI、IoT、ビッグデータが及ぼす近未来予報について記された書籍が多い中、緻密な理論に裏付けられた1冊。

 少々ボリュームはありますが今週はそんな本書をご紹介させていただきます。

【所感】

 大きく3章に分けられた本書。変化、理論、予測の流れで構成されています。
変化の章では、いわゆる専門職が他の職業と明確に区分される理由につき考察を重ね、特に冒頭で記した9業種については仔細に分析をしています。

 いわゆる専門職とは、知識や知恵の門番であったのだとの表現には非常にうなされました。
専門職の手掛ける分野は、なかなか一般の人ではアクセスが困難な領域であり、相応のコストを要するもの。専門職とはそのアクセスのための狭き門に立ち、導く存在であったという定義は非常に共感を生むものでした。
 
 その後の章では、専門職の将来につき、理論的な裏付けを踏まえつつ、予測をした構成となっています。

 結論から先に記してしまえば、もはや専門職のもつ知見を社会の中で役立てる仕組みが、いま根底から変わろうとしており、後戻りは出来ないという事実。

 その中で我々が唯一抗える術は、新たなスキルと能力を獲得することに他なりません。
①新たなコミュニケーション手法の取得 ②データ活用方法の取得 ③テクノロジーとの新たな関係を築くスキルの取得 ④多様化

 これらを総括して「柔軟性」の確保に他ならないのだと著者は記しています。

 しかしながら専門職に従事する人々が、いかに変化に対応しようとも、(その明確な時期は分からないとしながらも)これまでの伝統的な専門職は解体され、多くの(全てではない)専門家たちが彼らほどの能力を持たない人々や、高いパフォーマンスを発揮するシステムに置き換えられる未来は回避は出来ないのだと、まとめています。

 それは悲観すべきことなのか?

 いえいえ世界中の人々が、富める者も貧しい者も、支援やガイダンス、学習、知恵といった宝の山への直接的なアクセスを手にして、それを使ってより健康で幸福な生活を実現することになるという未来を開くのなら、それは非常に素晴らしい世界であり、専門家という自身の小さな砦など壊してしまうべきなのかもしれません。

 とはいえ、現実にそれを受け止めていくには大いなる葛藤があることは否定出来ないのですが。

 450ページほどの体裁、やや難解な部分はありますが、巧みな比喩で分かり易くプロフェッショナルの未来を説いた本書。示唆に富んだ一冊。お薦めです。

                             朝日新聞出版 2017年9月30日 第1刷