2017-10-15  VOL.225IMG_1282
【概要】

   日本百貨店 http://nippon-dept.jp/
2010年12月に東京は上野御徒町でオープン。「ニッポンのモノヅクリ」と「スグレモノ」をテーマに日本全国からモノづくりにこだわった職人の手による商品を集め、販売をしています。

 東京御徒町以外にも6店舗を構えるほか、「出張百貨店」と称し、日本全国の商業スペースやイベントスペースでの出張販売も行っています。

 そんな同社の経営理念は「ニッポンのモノヅクリにお金を廻す」。社訓は「おもいやり」。そして行動指針は「日本のスグレモノ、発掘・発信!」とユニークなものになっています。

 今や年間70万人以上の利用者がおり、仕入先は1,000社近く。つながっている自治体は100以上。
オープンから7年で、多くの人々に支持される店舗や仕組みを作り上げたのは、同社を率い本書の著者でもある鈴木氏。伊藤忠商事で9年程勤務した後、起業をし現在に至ります。

 商社マン時代、海外ブランドを輸入し日本国内で広める業務に従事していた著者。日本のモノづくりの素晴らしさを再発見しつつも、おおよそ儲からない作り手たちの現状。そんな状況を変えたい。作り手にお金が廻る仕組みを作りたいとの思いが、同社を立ち上げるきっかけとなったそうです。

 本書は、そんな著者の語る日本百貨店の活動紹介と、モノづくりにお金の廻らない理由などにつきまとめた1冊となっています。

【所感】

 6章からなる本書。同社の活動紹介をベースとしつつも、本書は「売り手」「作り手」に対するメッセージを強く含んだ内容と言えます。
 どんなに優れたモノづくりをしようとも、それは認知され、実際に売上につながり、お金として回収出来なければ、意味がありません。

 ややもすれば、自身の一方的な思いが先行しがちな「売り手」や「作り手」に対し、同社での販売や仕入れを通じて得た経験則を分かり易く伝えています。

 そのキーワードはずばり同社の社訓でもある「おもいやり」。「おもいやり」とは想像力なのだと著者は説きます。自社の社員には、店頭で商品を並べるとき、こんな風に並べたらお客様はどう思うのだろうか?作り手の方はこんな風に並べられて喜ぶのだろうか?と考えることを求めます。

 はたまた売り手の方には、使い手に思いを馳せたモノづくりにをすることや、バイヤーに対するちょっとした工夫の必要性などを訴えています。

 売り手、作り手双方で絶えず想像力を発揮すること。「おもいやり」は本書で何度となく登場するキーワードでありタイトルにもなっていますから、これこそ著者が最も伝えたいメッセージに他ならないのでしょう。

 さて今や小売はネット通販が主流であり、投資金額や効率などを考えればリアル店舗を構えることは非常にリスクも伴います。同社もネット通販の存在を否定はしていません。
 ただリアル店舗による「作り手と使い手の出会いの場」の方がさまざまな化学反応を起こしやすいのだと説いています。
 実際に手にした触感。作り手の技を見ること。思いを聞いてみること・・・・。そんな一つ一つのプロセスによる実感が、これまで気付かなかった「新しいモノ」や「新しいヒト」との出会いを創出をしてくれる。それはネットでは出来ない体験であり、まさにリアル店舗ならではの価値。

 またこういったリアル店舗の存在が、様々な企業からコラボレーションを呼び込むきっかけにもなっており、別の商機も生み出しているそうです。

 モノの売れない時代と言われて久しい昨今、それでも勝機は必ずあるはず。そんな勇気と示唆を与えてくれる1冊でした。


                           実業之日本社 2017年9月30日 初版第1刷