2017-10-22  VOL.226IMG_1340

【概要】

 NIKE(ナイキ)https://www.nike.com/jp/ja_jp/

    言わずと知れたスニーカーやスポーツ関連の世界企業ですね。
 連結売上高は306億100万ドル。連結従業員数62,200人(共に2015年5月現在)に達しグループ企業には、コール・ハーン、コンバース、アンブロ等を擁しています。

 本書は、そんなNIKEの創業者にして、2004年までCEO。2016年まで同社会長を務めたフィル・ナイト氏による自叙伝。

 80歳になろうかというフィル氏ですが、本書は全生涯について記されているわけではありません。
 創業前、彼がまだスタンフォードの学生であった1962年から、株式公開を果たした1980年までを中心に記されています。
 
 今や同社の社名を知らない人などいない著名企業ですが、本書で語られる内容は華々しさなど皆無です。24歳の若者が起こした小さな企業の成長物語には、多くの方が共感を覚えるのではないでしょうか。

 ちなみにSHOE DOGとは「靴業界で長く働くベテラン」という意味のスラング(俗語)だそうです。

【所感】

 1962年から1980年まで各年に1章ずつをあてて構成された本書。
自身の将来を決めかねていた24歳のフィル氏が、日課の早朝のマラソン時に天啓とも言えるある思いを抱くところから、本書はスタートします。
 それはスポーツシューズの販売で起業をしようというもの。そしてそのスポーツシューズとは、日本のオニツカ(現アシックス)が製造をしていたものでした。

 一学生の身分に過ぎない彼が、お金をかき集め日本に渡り、まだ自身の会社すらない中、架空の会社の名前を語り、米国での独占販売権を勝ち取ります。

   その後紆余曲折を経て、米国で同社製品販売を大きく伸ばしますが、やがて両者は袂を分かつこととなります。
 自社自らのブランドを立ち上げつつあった同社ですが、オニツカとの契約破棄で、金融機関からも見限られそうになった同社を救ったのは日本の商社、日商岩井でした。

 同社の支援を受けつつも、より自立の道を模索する中、やがて株式公開を決意。1株22ドルの売出価格に決定するあたりで、本書は結ばれています。

 取引企業との軋轢、困窮する資金繰、自社ブランドの創設。様々な難題に見舞われつつも、それを乗り越えていく様。驚くべきは30年~40年もの前の出来事ながら、些末なことまで記憶されていることがもたらす臨場感。純然たるノンフィクションですが、先へ先へと読ませる展開には、うならされてしまいました。

 大成功者となったフィル氏ですが、本書の語り口はとても控えめであり、人生訓めいた記述、説教めいた記述は微塵もありません。
 ただ、全編を通じ感じるのは「負けたくない」との強い意識。オレゴン大学を卒業しスタンフォードでMBAを取得。会計士でもあったフィル氏。決して恵まれない環境下にあったわけではないのですが、この飽きなき負けじ魂は、元アスリートであったゆえでしょうか?

 また本書で印象的なのはNIKEの誕生と発展に、これだけ日本の企業が関わっていたという事実。
オニツカ、日照岩井。当時の日本企業はここまでアグレッシブで世界と戦う気概があったという事実も非常に興味深いものでした。

 NIKEファンならずとも、一読の価値ありの本書。500ページを超えるボリュームですがお薦めの一冊です。 

                             東洋経済新報社 2017年11月9日発行