2017-12-31  VOL.236IMG_1828

 今回で本年のブログも最後となります。
1年間お付き合いいただきありがとうございました。今回ご紹介させていただくのはこんな一冊です。 

【概要】

 香川県にある勇心酒造 http://www.yushin-brewer.com/ 江戸末期安政元年(1854年)創業の老舗酒造メーカーです。

 戦前、日本全国に7,000蔵以上あったと言われる造り酒屋。年々減少の一途を辿り、今や酒造免許をもち実際に稼働している蔵は1,300前後と言われているそうです。

 そんな中にあって勇心酒造は、五代目当主である徳山孝氏が研究開発に成功した「ライスパワーエキス」の誕生で大変革を遂げます。

 本書はそんな同社の経営に迫った一冊・・・・・。

 といった単純な内容ではありません。
 明治学院大学経済学部教授であり、経営哲学学会の常任理事でもある著者はこう説きます。
「勇心酒造の変革は、同社の技術開発もさることながら、徳山氏の思想である「生かされている」という経営者哲学がその根底にあるのだ。」と。

 そしてそんな「生かされている哲学」という思想を通じ、幅広く企業経営や、我々を取り巻く社会問題の解決につながる一助を得る事が出来るのではないかとの意図をもって本書は記されています。
 
【所感】

 正直申し上げて、読み手の力量不足もあり、非常に理解しづらい内容でした。

  3章の章立てですが、1章ではいきなり微生物の話にはじまり、経営者哲学の概要に踏み込んでいきます。2章でやっと勇心酒造や徳山氏の沿革に触れていますが、日本酒製造工程やライスパワーエキス製造工程や効能などへと話が及びます。
   さらに3章では科学史にはじまり、トランプ政権や日本におけるロースクール閉鎖、企業不祥事問題として今さらながら、オリンパスの話が出てきます。

   おそらく著者ご自身の中では、必要な順番であり、思いを伝えるのに全ての要素が不可欠なのでしょうが、あまりに分かりづらく、正直、同社の沿革や経営に寄せる思いなどは、冒頭に紹介させていただいた同社HPで端的にまとめられていますので、そちらを参照された方がよいかもしれません。

 さて本書タイトルでもある「生かされている哲学」とは、一体なんなのでしょうか。

 酒造メーカーにとって不可欠な発酵というプロセス。それは微生物の働きがもたらすもの。日本という国は微生物に代表されるように、生物の力をうまく活用して今日まできた歴史があります。
 つまり我々はみな微生物の力により生かされている。この東洋的な考え方を根底に、そこに西洋的な科学を合一し、よりよいものにして次代につなぐこと。そんな考え方を世に広めたい。
 同社はそんな経営理念を掲げており、それを具現化したものが同社の「ライスパワーエキス」なのだそうです。 

 この思想には普遍的とも言える真理があるとの著者の主張には、大いに理解も出来ますが、如何せん本書での展開は、個人的には難解すぎました。もやもやとした読後感を覚えた1冊。勇心酒造という極めてユニークな企業を取り上げているだけに残念でした。

                          PHP研究所 2017年12月25日 第1版第1刷