2018- 4- 1 VOL.249IMG_2159

【概要】

 信越化学工業 https://www.shinetsu.co.jp/ 塩化ビニール樹脂、半導体ウエハーを主製品とする化学メーカーです。産業材メーカーゆえ一般的な知名度はあまりないかもしれませんが、直前期(2017年3月期)の連結売上高は1,237,405百万円。自己資本比率は80.3%に達する超優良企業です。

 本書は同社会長を務める金川千尋氏の手による1冊。
1962年同社入社。1990年には代表取締役社長に就任。同社を超優良企業へと躍進させた中興の祖でもある氏が、自身の経験則を100の実践録としてまとめたのが本書です。

 本書タイトルでもある「常在戦場」とは、同氏の尊敬する連合艦隊司令長官 山本五十六氏の言葉だそうです。「いつも戦場にいることを忘れず、いつでも戦えるように備えよ」
 そんな精神で経営に当たってきた同氏の熱い思いの詰まった1冊となっています。 

【所感】

 5章からなる本書。1章~4章までは、組織や人間社会のあり方、リーダーシップや経営者としての心得、人材育成や働き方など経営全般に関する思いを。
 終章である5章では、経営や仕事にとらわれず幅広い人生訓とでもいうべき内容が記されています。

 同氏のキャリア転換期となったのは、同社の海外子会社であるシンテック社の経営への参画。
1973年に米国企業との合弁会社として設立。1976年には完全子会社化。第一次オイルショックの影響もあり、ともに合弁会社会社を立ち上げた米国企業は破綻。
 そんな修羅場をくぐり抜けてきたことで培った胆力が、自身の原点なのだと説いています。

 全編を通じて感じるのは、ストイックさと徹底した現場主義。

 〇本業へ集中し、必ずその分野ではシェアトップになること。
 〇在庫、借金は嫌い。自身が最重視する経営指標は利益の絶対額。
 〇管理部門は厚くしない。無駄な組織いじりはしない。
 〇合議による意思決定は無意味。率先垂範、自らトップに立ちリスクを負う。
 〇市況の悪い時こそ、経営者が最大の力を発揮できる場面

 などの実践録が並びます。こう見てしまうと、非常に合理的で冷徹な印象を受けますが、一方では組織改革や人事においては、社員のプライドや自尊心を傷つけるような軽率な行動をとることを戒める記述もあり、経営の基盤が人にあるという大前提には、微塵のブレもないところはさすがと言えるのかもしれません。

 やや自画自賛が過ぎる感はあること。山本五十六氏を尊敬する御年92歳の戦中派であり、時折垣間見えるそういった記述には、少し抵抗感を覚えるかもしれませんが、それを補う示唆を与えてくれる1冊。
 100の実践録は、それぞれ独立し概ね2~4ページ程度でまとまっていますので、気になる内容の飛ばし読みだけでも、十分内容を追える構成となっています。 


                        宝島社 2018年3月29日 第一刷発行