2018- 4- 8 VOL.250IMG_2162

 2013年7月にはじまった当ブログも今回が250回目。いつもお付き合いいただきありがとうございます(^^)。
 毎週1冊ずつ新刊ビジネス書をさせていただき、これまでに紹介させていただいた冊数は249冊。
節目の250冊目には、こんな1冊を紹介させていただきます。

【概要】

 ちょうど5年程前に「機械との競争」という本が上程されました。
 これはリーマンショック後、一向に景気回復、雇用拡大しない先進国の経済状況に対し、その理由を「テクノロジーの進化が早すぎて雇用が喪失されている。つまりコンピューターとの競争に人間が負け始めているのだ。」と喝破した内容で、かなりの衝撃をもって受け止められた1冊でした。

 あれから5年。本書は同書籍の著者達の手による第三弾。

 人間の棋士を破った「アルファ碁」。さしたる資産をもたずとも、世の中に大きなインパクトをもたらす事業展開をする「Uber」「Airbnb」「Facebook」「Alibaba」といった企業群の出現。ニッチな需要しかない家庭用製氷機を作った巨大企業「GE」の試み。

 本書冒頭で、我々の身近な事例を引き合いにしながら、テクノロジーの進化は、大きな3つのトレンドを生み出しているのだと著者達は主張をします。それは「マシン」「プラットフォーム」「クラウド」の3点。

 ①マシン・・・・・コンピュータの能力が急速に成長・拡大していること
 ②プラットフォーム・・・・・有形固定資産はほとんどもたずとも、情報交換の場やサービス展開の土台となる環境 いわゆる「プラットフォーム」を提供する企業が台頭していること
 ③クラウド(ファンディング)・・・・・膨大な数の人々の知識や情熱の活用が可能になりつつあること

 本書では、この3つのトレンドを切り口に、これからの社会と企業が向かおうとしている未来につき考察を試みた1冊となっています。

【所感】
 
 500ページを超えるボリュームで、手にとるのも躊躇しそうな1冊ですが、意外と読み易いのは、事例の豊富さと、その影響を日々我々が実感する機会が増えているせいではないかと感じました。

 3つのトレンドには、それぞれ対になるものが存在します。

 ①マシン ⇔ 人間の知性 
 ②プラットフォーム ⇔ 物理的な世界のモノやサービス
 ③クラウド ⇔ コア(国や企業などの組織が、長年にわたり蓄積してきた知恵や知識、しくみなど)
  
 本書の内容を端的に言うならば、これからの企業や組織は、ここ数年飛躍的に拡大してきた、「マシン」、「プラットフォーム」、「クラウド」の能力をしっかり見極め、それぞれと対になる「人間」、「物理的なモノ」、「コア」との最適な組み合わせを考える必要があること。
そしてその最適な組み合わせを構築した企業が、成功を収めていくということでしょうか。

 ただ技術革新のスピードは、あまりに早く、今日の企業の成功は明日も約束されたものではありません。よって本書でも、明確な成功のためのノウハウやビジネスモデルの提示は出来ないとしています。

 しかし多くの示唆に富むトピックと、各章ごとに設けられた「まとめ」と「あなたの会社では?」との問いかけは、自社の将来を考え、その考えを整理していく上で、分かり易い構成であり、テクノロジー進化のガイド本としては、最高の1冊と言っても過言ではないかもしれません。

 個人的に印象深かったのは、3部11章の「専門家はなぜ役にたたないのか」という章でした。
 クラウドの進展で、しばしば専門家を凌駕する研究結果や成果が生まれていること。
その背景には、技術の進展はもとより、既存の組織などの枠にはまった専門家は、しばしば自身のやり方に固執するきらいがあること。またなかなか違う視点から問題をみることが出来なくなっていってしまう傾向などを指摘しており、非常に納得の出来る内容でした。

 人は基本的には保守的なものであり、本書で記される内容や傾向は、我々に大きなストレスをもたらすことは想像に難くありません。人間にとって「マシン」や、「プラットフォーム」、「クラウド」はしばしば敵対すべき存在として映るのかもしれませんが、その流れはもはや止められないもの。

 発想を柔軟にし、いかに共存を図るかに思いを馳せることが、我々が取り組むべき最重要課題かもしれません。

 著者達も、本書が伝えたいのは、悲観論ではないとしています。
たとえば、本書の3つのトレンドにより、世界中で「教育の機会」が大きく拡大したり、多くのイノベーターが発掘されやすくなっている状況などが明かされています。 

 「テクノロジーそれ自体は道具であって、運命ではない。運命を決めるのは私たちだ」

 それこそが本書における著者たちの最たる主張ではないでしょうか。

                    日経BP社 2018年3月27日 第1版第1刷発行