2018- 4-15 VOL.251IMG_2197

【概要】

 動画共有サイトYouTube。もはやその存在を知らない人は皆無ではないでしょうか。2005年に米国で設立、2006年にはGoogle社が買収をしており、日本では2007年からサービス提供がはじまっています。
 もともとは個人撮影した映像を共有し楽しむために誕生したサイトですが、著作権を侵害した違法動画の投稿や、犯罪すれすれの迷惑行為を撮影した動画が、しばしば炎上を起こすなど、同サイトに対して、あまりいい印象をお持ちでない方も多いのではないでしょうか。
 
 また数年前から、人目を引く動画の投稿で大金を稼ぐ若者たち。
いわゆるユーチューバーが注目を集めるようになっており、小中学生のなりたい職業にランクインしてくるなど、かつてなかった職種?の登場に戸惑う方も少なくないかもしれません。

 しかしいまやYouTubeには、全世界から毎月15億人もの人がアクセスをしており、毎分400時間を超える動画が投稿されているそうです。もはや動画投稿サイトの標準プラットフォームとなりつつあるYouTube。
 同社CBO(副社長)の手による本書は、同社の起業や経営について記したものではありません。Y
ouTubeを使い、世界にインパクトを与えるような作品や活動を生み出す人々に着目。
 彼らを通じ、世界は、メディアは、どう変わろうとしているのか?について考察をした1冊となっています。

 
【所感】

 YouTubeへの投稿で、多くの支持を集める先駆者たちを、著者は「ストリームパンク」と呼んでいます。音楽や動画をダウンロードしながら再生する技術「ストリーミング」と反権威主義「パンク」を掛け合わせた造語なのでしょうね。

 YouTubeを象徴するスターとなったジャスティン・ビーバー。韓国人ながら「江南スタイル」というMVで全世界で知られることとなったPSY。
 日本でも、ニュースなどを通じ、名前を聞いたことのあるアーティスト以外に、多くのユーチューバーたちが本書では紹介されています。

 〇YouTube上でコミュニティを形成し、全世界で2,000万部以上自書を売ったジョン・グリーン
 〇ゲイであることをカミングアウト。LGBTQコミュニティの認知に多大な貢献をしているタイラー・オークリー
 〇キルト作成のチュートリアル動画から、町おこしに一役買ったジェニー・ドーン など
  
 残念ながら個人的には、ほとんど名前を知らない人々ばかりですが、ジャンルは違えど動画投稿をきっかけに、それぞれの世界が大きく広がっていった様子が描かれています。
 
 彼(彼女)らの成功には、共通的な要素がみられるそうです。それは

 〇コミュニティを形成し育てることに長けている 
 〇偽らない等身大の自分を語っている
 〇国境を越える魅力を持つ動画を作成している
 〇自分達の多様性と独特の視点を活用している
 〇ニッチの魅力を理解し、一般大衆でなく熱い少数のファンにめがけ発信をしている
 

 そして、彼(彼女)らの成功は一夜にして生まれたものでなく、地道なトライアンドエラーの繰り返しであったことを著者は強く主張をしています。

 インターネットの普及で、誰もが世界に向けて情報発信が可能になって久しい昨今ですが、ブログなどの文書には、言葉の壁が付きまといます。しかし動画であれば、その壁は易々と超えていけます。また百聞は一見にしかずと言われるように、どれだけ言葉で語られるよりも、動画などで見ることが与えるインパクトは、特にジャーナリズムの面では図りしれないものがあります。

 思えばネットで、画像や動画といった容量のあるものを送るためには、大変な手間と労力、そしてコストがかかるものでしたが、いまやスマホ一台でそれが可能となっている時代。その意味の大きさを改めて感じさせられた本書。

 実は著者は、社会主義時代のチェコスロバキアの出身。
 あらゆる情報が統制される中、必死で見聞きした映像や音楽のインパクト。各自が自在に自身の考えや思いを表現できる素晴らしさ。それを痛感しているがゆえに活躍するユーチューバーたちに向けた暖かな目線。

 翻訳本ゆえ、章立てなど、やや読みづらい部分はありますが、示唆に富んだ興味深い1冊でした。



                            2018年3月15日 第1刷発行