2018- 6- 3 VOL.258
【概要】
東京都江戸川区船堀にある煎餅工場、笠原製菓 http://senbei-brothers.JP/ http://senbei.saleshop.jp/
本書は、同社の4代目を務める笠原兄弟の手による1冊です。
戦後に創業。中小企業にありがちな大手メーカーの下請工場としてやってきましたが、年々減少する煎餅需要。さらにリーマンショック、東日本大震災後の節約志向で、贈答用の高級煎餅需要も減少。
2代目ながら、40代の若さで亡くなった兄弟の父親。3代目となった叔父の体調不良、膨らむ債務。
もはや廃業待ったなしの状況で、先に入社していた弟の後を追い、4代目の社長となった兄。経営者としての経験も、煎餅屋としての経験も、何もないまま徒手空拳で家業立て直しに奔走します。
脱下請を目し、生み出したオリジナル商品。工場店頭や最寄り駅、催事での販売。兄弟の地道な努力は、消費者の支持を受け、多くのメディアに取り上げられます。
結果、長らく続いた赤字決算をわずか1年で黒字化。同社の作る煎餅は、今や入手困難なブランド煎餅として人気を博すようになっています。
そんな兄弟の自叙伝とでもいうべき本書。下請ゆえの悲哀。老朽化する設備、困窮化する資金繰の手当て、わずかな光明をつかむ過程。どこの町にでもありそうな小さな工場の奮闘記。でも湿っぽさは微塵もなく、煎餅のようにパリッとした爽やかさすら、感じる1冊に仕上がっています。
【所感】
八方塞がりの中、4代目社長となった笠原(兄)。危機脱却として考えたのは自社オリジナルの商品を持つことでした。
デザイナーとして20年以上働いてきた自身の経験と、高級煎餅の下請工場だったゆえ、培ってきた笠原(弟)の製造技術の高さ。
両者の「ものづくり」経験こそが武器になると考え、工場初の小売りブランド「センベイブラザーズ」を立ち上げます。
自社商品を売るためには、まずは煎餅の魅力を再発見してもい、需要を増やすこと。
そこで笠原(兄)は、自身の経験から、NYで売られるホットドッグのように、みんなが気軽に持ち歩き、カッコよく食べられる煎餅を作ることを目します。
そのコンセプトは「せんべいを、おいしく、かっこよく。」
経営資源の乏しい中小企業ゆえ、様々な工夫をしつつも、自分達が食べたい煎餅を妥協せずに作るとの思いを抱き、直売経験がないゆえ様々な失敗を重ねつつ、販売実績を積み上げます。
SNSによる口コミ効果も相まって、同社の煎餅はさらなる評判を呼び、名だたる企業や団体から下請けでなくコラボ商品開発の声がかかるまでの認知度となっていきます。
そのあたりの経緯は是非本書をご参照いただきたいと思いますが、煎餅のような一見「枯れた商品」だとしても、やり方一つで大きく活路を開く様子は、多くの方、特にご商売をされている方の共感を得る点は多いのではないでしょうか。
今やプレスリリースやSNSの活用など、企業規模に関係なく様々な発信が可能な時代。
そのために必要なことは、自分たちの伝えたい思いを端的にまとめておくこと。首尾一貫していること。そして何よりも自分たちの商品にほれ込み、自らがヘビーユーザーであること。その強い思いこそが、皆の共感を生み、新たな展開を生んでいく・・・・・。
本書はそんな好例を綴った1冊かもしれません。
大和書房 2018年6月1日 第1刷発行
【概要】
東京都江戸川区船堀にある煎餅工場、笠原製菓 http://senbei-brothers.JP/ http://senbei.saleshop.jp/
本書は、同社の4代目を務める笠原兄弟の手による1冊です。
戦後に創業。中小企業にありがちな大手メーカーの下請工場としてやってきましたが、年々減少する煎餅需要。さらにリーマンショック、東日本大震災後の節約志向で、贈答用の高級煎餅需要も減少。
2代目ながら、40代の若さで亡くなった兄弟の父親。3代目となった叔父の体調不良、膨らむ債務。
もはや廃業待ったなしの状況で、先に入社していた弟の後を追い、4代目の社長となった兄。経営者としての経験も、煎餅屋としての経験も、何もないまま徒手空拳で家業立て直しに奔走します。
脱下請を目し、生み出したオリジナル商品。工場店頭や最寄り駅、催事での販売。兄弟の地道な努力は、消費者の支持を受け、多くのメディアに取り上げられます。
結果、長らく続いた赤字決算をわずか1年で黒字化。同社の作る煎餅は、今や入手困難なブランド煎餅として人気を博すようになっています。
そんな兄弟の自叙伝とでもいうべき本書。下請ゆえの悲哀。老朽化する設備、困窮化する資金繰の手当て、わずかな光明をつかむ過程。どこの町にでもありそうな小さな工場の奮闘記。でも湿っぽさは微塵もなく、煎餅のようにパリッとした爽やかさすら、感じる1冊に仕上がっています。
【所感】
八方塞がりの中、4代目社長となった笠原(兄)。危機脱却として考えたのは自社オリジナルの商品を持つことでした。
デザイナーとして20年以上働いてきた自身の経験と、高級煎餅の下請工場だったゆえ、培ってきた笠原(弟)の製造技術の高さ。
両者の「ものづくり」経験こそが武器になると考え、工場初の小売りブランド「センベイブラザーズ」を立ち上げます。
自社商品を売るためには、まずは煎餅の魅力を再発見してもい、需要を増やすこと。
そこで笠原(兄)は、自身の経験から、NYで売られるホットドッグのように、みんなが気軽に持ち歩き、カッコよく食べられる煎餅を作ることを目します。
そのコンセプトは「せんべいを、おいしく、かっこよく。」
経営資源の乏しい中小企業ゆえ、様々な工夫をしつつも、自分達が食べたい煎餅を妥協せずに作るとの思いを抱き、直売経験がないゆえ様々な失敗を重ねつつ、販売実績を積み上げます。
SNSによる口コミ効果も相まって、同社の煎餅はさらなる評判を呼び、名だたる企業や団体から下請けでなくコラボ商品開発の声がかかるまでの認知度となっていきます。
そのあたりの経緯は是非本書をご参照いただきたいと思いますが、煎餅のような一見「枯れた商品」だとしても、やり方一つで大きく活路を開く様子は、多くの方、特にご商売をされている方の共感を得る点は多いのではないでしょうか。
今やプレスリリースやSNSの活用など、企業規模に関係なく様々な発信が可能な時代。
そのために必要なことは、自分たちの伝えたい思いを端的にまとめておくこと。首尾一貫していること。そして何よりも自分たちの商品にほれ込み、自らがヘビーユーザーであること。その強い思いこそが、皆の共感を生み、新たな展開を生んでいく・・・・・。
本書はそんな好例を綴った1冊かもしれません。
大和書房 2018年6月1日 第1刷発行
コメント