2018- 6-10 VOL.259IMG_2387

【概要】

 2013年、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が発表した論文「未来の雇用」。
 それは、「今後10年~15年の間に2010年に存在している米国の労働人口の47%、英国では35%に相当する仕事がコンピューターに取って代わられる可能性が高い。」と予測をした衝撃的な内容でした。

 仕事がなくなるということは、その仕事を提供している企業、あるいは産業そのものも消滅してしまうということ。

 デジタル技術の発展は、今世界を大きく変えようとしており、まさにその様相は「破壊」。そんな時代下にある企業や産業そして我々は、どんな戦略を立てれば、生き残りを図ることが出来るのか。そんな生き残り戦略について考察をした本書。

 Google日本法人、ソフトバンク、Twitter日本法人などを経て、現在はLINEで執行役員を務める著者。まさにデジタル時代の申し子とでも言うべき企業を渡りあるき、日本市場攻略の戦略策定に携わってきた著者ならではの視点が光る1冊です。

【所感】

 本書を単なる「自己啓発本」にはしたくなかったと語る著者。安易なノウハウや法則めいたものを説くのではなく、今現在起こっている変化をどう読むのか、その読み方を示唆する内容となっています。
 
    本書構成の大前提として、著者は3つの技術進化と3つの原則を我々に提示しています。

 3つの技術進化
 ①「インフォメーション」情報認知伝達に関する技術の進化
 ②「モビリティ」物理的移動に関する技術の進化
 ③「エネルギー」技術進化を可能とさせる動力源に関する技術の進化

 この前提を踏まえた上で、技術革新により勝者と敗者を分ける3つの原則として
 ①人間中心に考える ②存在価値を見定める ③時空を制する を挙げています。

 本書はこの3原則を3部に分け、全6章で各原則の意味するところを解説した構成となっています。

 第1章からグイグイと引き込まれる本書。
 同章の「インフォメーション」技術進化の解説で「カンブリア大爆発」について触れたくだりがあります。これは生物に「眼」が誕生したことから、莫大な情報量を入手することが可能となり一気に生物の数は増加したという学説の引用をしたもので、この掴みで一気に本書への期待感が高まりました。

 その後も歴史のターニングポイントを紐解きながら、技術進化の過程を解き明かしていく構成は非常に興味深く、そこに前述した3原則を交えながら展開することで本書の内容を、より納得感あるものとしています。

 著者は研究者や学識者でもなく、企業経営者でもありません。また著者自身が、本書は多くの参考文献を下敷きに戦略立案に必要とされる定説やフレームワークなどを整理して再構築をしたものに過ぎないと冷めた言い方もしています。

 しかしながら、それが本書の価値を貶めていることは一切ありません。むしろ学識者や経営トップにありがちな自身の学説や強烈な主張がなく、客観的な目線で一歩退いて描かれているゆえ、読み易く賛同出来る部分が多いというのが率直な感想でした。
 全章末に設けられたまとめも思考の整理に一役買っており、よくまとまった本書。
是非一読いただきたい好著です。

 ところで、これから勝ち残れる産業や企業は、一体どういったところなのでしょうか。
あえて明言はしていない著者ですが、巻末で生き残りの3原則を具現化している業態として、意外や意外「スナック」を挙げています。その真意はいかに?  
 


                    ダイヤモンド社 2018年5月23日 第1刷発行