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 2013年7月からスタートした弊事務所の公式ブログ。
いよいよ6年目を迎えます。いつもお付き合いいただき、本当にありがとうございます。毎週1冊の新刊ビジネス本を紹介させていただき262冊目。今週はこんな1冊をご紹介させていただきます。
 
【概要】

 現在、消費者行動は「所有」から「利用」へとシフトしつつあると言われています。この流れを受け、企業は積極的にサブスクリプションモデルの構築を目指し始めています。

 サブスクリプションモデルとは、毎月平準化された一定額を支払うことでサービスが享受出来る仕組みであり、アマゾン・プライムや音楽配信のスポティファイなどの会員になられている方も少なくないのかもしれません。
 定額支払いとは決して新しいビジネスモデルではありませんが、クラウド技術の進展もあり、かつては購入以外に選択肢のなかった様々なモノやサービスまでが、この流れへと向かっています。

 消費者には、初期投資もいらず、やめたい時にいつでもやめることの出来るサブスクリプションモデルは大変便利なものですが、提供する企業側にとってはどうなのでしょうか。

 これまでのように、大型の販売契約をいくつか取ることで、売上を確保するのではなく、単価の小さな顧客をたくさん確保し、かつ継続利用を促し売上を確保する方向へとシフトをする必要があります。

 そのようなビジネスモデルにおいて、大切なことは①チャーン(解約)の減少と管理。②既存顧客の契約(利用)金額増。③カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)と顧客満足度の向上。

 そのために企業が最優先すべき事項は、「カスタマーサクセス」すなわち「顧客の成功(の支援)」であり、そこで必要とされる考え方や行動について考察をしたのが本書です。

【所感】

  17章からなる本書。サブスクリプションモデル、カスタマーサクセス(戦略)の概略にはじまり、中心となるのは、カスタマーサクセス実践のための10の原則。 1つの原則に、1章ずつを充てながら解説をしています。

 正しい顧客に販売すること、顧客の指標を深く理解すること、(カスタマーサクセス)にトップダウンかつ全社レベルで取り組む必要性などが挙げられています。

 この10の原則こそ本書の要諦ですが、惜しむらくは、10の原則すべてをバラバラの執筆者が担当をしていること。原則という割には、その名称などにも一貫性がなく、各章の冒頭にサマリーと章末には著者等の補足説明があるものの、端的にまとめこの場でお伝えするには、少々ハードルが高いというのが正直な感想です。

 また様々なジャンルにサブスクリプションモデルは広がっており、全ての企業、業種にとってこのカスタマーサクセスへの取組は不可欠なものとしつつも、やはりその主流はSaaS(ネット経由でソフトウェアを利用するサービス)であり、著者達の経歴や事例を含めどうしても同業界での観点からとなる点も少々、不満の残るところです。

 著書名ゆえ「カスタマーサクセス」の言葉が多用され、何度となくその定義が本書内でもされているのですが、それが理念やコンセプトを指すのか、組織や部署を指すのか、仕組みを指すのか、少々混乱をするのは訳書ゆえかもしれません。

 その中でも、「カスタマーサクセス」とは ①収益ドライバー(契約更新/アップセル)②能動的 ③成功重視型 ④分析中心 ⑤予測性 

 と整理した記述があり、結局のところ「カスタマーサクセス」とは、ネット技術を利用し、顧客におけるソフトウェアの稼働状況や収集されたデータに着目し、その解析や活用を積極的に提案し、顧客自身の成長や収益性向上に貢献する努力を惜しまないこと。
 とはいえあらゆる顧客に対し、その実現は(理想とはいえ)困難であり、それゆえ10の原則にあるように「正しい顧客」を選ぶことが第一の原則とされていることが、非常に腑に落ちた次第です。

 著書名のキャッチーさに反し、少々読み辛い本書でしたが、今後あらゆる業種でサブスクリプションモデル化が進展するという著者達の主張は大いに賛同出来るものでしたし、一つの大きなビジネストレンドとして、押さえておくべき1冊とはいえるのかもしれません。

 

                      英治出版 2018年6月10日 第1版 第1刷