2018- 7- 8 VOL.263IMG_2507

【概要】

 30年6月29日 参院本会議で可決成立した「働き方改革関連法案」。これは残業時間の上限規制、同一労働同一賃品、脱時間給制度の導入などを目したもので、今や日本の労働慣行は大きな転換期を迎えようとしています。

 残業時間の上限規制でまことしやかに囁かれるのは、事実上の残業代カット。すなわち給与の減少につながるのではないか? と戦々恐々としているビジネスパーソンも少なくないのかもしれません。

 働き方改革を機に、ビジネスパーソン自らが給与の本質について再考すべき時期にきているのではないのか?
 むしろこんな時代だからこそ「自分の力で給与を上げる」ことが可能ではないのか?

 著者はそんな問いかけをしています。

 終身雇用と年功給を前提に、業績と連動し成果が出たものには賞与で調整。基本的に人件費は抑制すべきとの考え方が「給与1.0」。

 これに対し本書タイトルでもある「給与2.0」とは「付加価値で企業と社員がつながる」という考え方。社員自らが自身の価値を高め、それを可視化することで給与も上げていこうという考え方です。

 また企業サイドに対しては、人件費とは抑制すべき「費用」ではなく、生産性や業績向上のための「投資」なのだと認識を改めることを促しています。

 会社と社員が対等な立場で給与について話し合い、給与の額を決定する。一部の企業ではそういった動きが始まっており、業績にも好影響を及ぼしているそうです。

 そんな「給与2.0」について考察をしたのが本書です。 
 
【所感】

     4章からなる本書。
 まず第1章では、終身雇用、年功給の限界、成果主義の失敗。これまでの日本型給与制度の概要に触れ、基本的に給与とは抑制されるものだと説き、制度そのものの見直しも必要だが、まずは雇用される側の意識の変革が必要だと説きます。

 そのために必要なことは、各人がプロフェッショナルとして会社にどんな貢献が出来るのかを約束すること。そして自分自身が給与を決め、それをもらえるだけの目標設定をし、行動を変え、給与を勝ち取っていくような働き方をすること。

 当然、貢献を約束するためには、会社にとって必要な領域で必要な能力を発揮するための自身のキャリア形成についても考える必要があります。
 そこで第2章ではリクルート出身で、義務教育下で初の民間校長となった藤原和博氏の著書「10年後、君に仕事はあるのか?」を引用しながら、自身の希少性を高める方法などについて触れています。

 そして本書の要諦とも言える第3章では、サイバーエージェント、サイボウズなど先進的な働き方や給与制度に取り組む9社の事例を紹介しつつ、具体的な実現につき考察を加えています。

 最終章では、給与アップには①時給という考えを持つこと。②自身のバリューを上げること。③会社と同じ方向を向くこと 3つの視点が必要とし本書を結んでいます。

 恐らく一読されると「そんな話は理想論」「赤字などで業績の上がらない企業はどうするのか」「バックヤード業務や間接業務の評価はどうするのか」といった疑問は当然生まれることと思います。
本書は具体的な制度設計までは、踏み込んだ内容にはなっておらず、一連の疑問への回答は残念ながらありません。

 それは事例として取り上げられた企業群でも同じであり、各社、試行錯誤を繰り返しつつ制度の構築に苦心をしていますが、重要なことはそんな取組を介する中で、確実に社員の意識は変わっていくことにあるのではないかと個人的には感じた次第です。

 戦後、急速に拡大した給与所得者「サラリーマン」という働き方は、自身がどう働き、どう生きるのかというもっとも大切な部分を企業に丸投げする、実は極めてリスキーな行為だったのかもしれません。

「働き方改革」を機に、それを自らの手に取り戻す。あるいは常に考え、自身の意識や行動を改める。
そんなことの大切さを改めて気づかされた1冊でした。

                                          アスコム 2018年7月6日 第一刷