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2018- 8-12  VOL.268

 

 今週末はお盆休みという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回はこんな軽目の一冊をご紹介させていただきます。

 

【概要】

 

 年々減り続ける「街の書店」

調査会社アルメディアによれば、20185月現在の全国店舗数は10,175店。前年比500店減。10年前に比べ3割近く減少しています。

  かつては、お住まいの地域や、ご利用される駅のそばに書店があったのに、気づけば無くなっていた・・・・・ そんな経験をされた方も少なくないのかもしれません。

  そんな中、数は少ないながらも新規にオープンする書店もあり、また書店開業塾といった講座もあちこちで開かれ、これから開業を検討されている方も少なくないそうです。

  とはいえ厳しい経営環境下にあることには間違いありませんから、その運営には確固たる戦略が必要です。本書に登場するキャッツミャウブックス https://twitter.com/CatsMeowBooks https://www.facebook.com/CatsMeowBooks の店主である安村氏は、ある講座でこれからの書店は4つの事柄が大切であることを学んだそうです。それは

 

 ①本だけを売っても採算が取れないので「本×〇〇」の掛け算にし、その要素は、ありきたりのモチーフでないこと 

 ②別の職業を持っていることを強みにし、しばらくその職業をやめないこと 

 ③メディアの取材記事にとりあげてもらいやすいように、コンセプトを固めること 

 ④広報手段に、名刺、ロゴ、ウェブサイトをもつこと

 

 そうして出来上がったのが、前掲の書店 キャッツミャウブックス。 ①保護猫が「店員」として常駐 ②新書古書おりまぜ扱う本は全て「猫本」 ③収益の一部を保護猫団体に寄付 ④中古建売住宅を改装して店舗に ⑤ビールなどの飲料も販売 ⑥開業資金の一部はクラウドファンディングで調達・・・・・。

 

 本書は、そんな同店の開業から今までや店主のパーソナリティに迫りながら、これからの書店の在り方について考察をした1冊となっています。

 

【所感】

 

 東京は世田谷区三軒茶屋から1駅。西太子堂という駅の住宅街にキャッツミャウブックスはあります。店主の安村さんは、普通のサラリーマン。ビブリオバトルという書評合戦界では著名なれど、書店勤務経験すらありませんし、当然豊富な自己資金もありません。

 

 そんな安村氏が、猫好き、本好き、そしてビール好きという自身の嗜好を活かした書店を、いかにして実現をさせたのか。本書は丹念にその様子を追っていきます。

 

 自宅アパート前に捨てられていた3匹の猫のうち、2匹を救えなかった贖罪。ビブリオバトルを重ねつつ知己を得た出版、書店業界の方々。人生折り返しを過ぎ否応なく押し寄せる自身の年齢の意識。

 様々な思いを重ねつつ開業を決断する経緯。開業に要した資金内訳、開業後の損益状況 etc・・・・・

自身も書店開業塾や様々な人の支援を得てきたゆえ、惜しみなく様々なノウハウを開示しているのは、後進達への配慮もあるのでしょうが、同じような店を誰でも作れるわけはないことの強烈な自負なのかもしれません。

 お子様を持たないご夫婦ゆえ、何かを世の中に残したかったとも語られており、本書では淡々、飄々と描かれている安村氏の様子ですが、そこに秘められた思いには、読者には計り知れない熱いものが込められていることに間違いはなさそうです。

 

 とはいえ堅苦しく読む必要はない本書。冒頭4ページの写真に登場する猫たちや、書店の様子を見るだけで、早速足を運びたくなるのが難点ですが。

 

 多様な仕事、働き方を許容する社会こそ、豊かな社会。多くは儲けられないかもしれませんが、金銭ではない豊かさを自身や地域へもたらす。今求められれているのは、そんなビジネスなのかもしれませんね。

 出版業界、書店業界、動物愛護(保護猫)、ダブルキャリア 様々な示唆を含んだ本書。

お盆休みに是非手に取っていただきたい好著です。

 

                             集英社 2018年7月30日 第1刷発行