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2018- 9- 2  VOL.271

  

【概要】

 

 Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)
 言わずと知れた世界最大規模のECサイト、Webサービス会社です。2017年決算では、売上1,778億6,600万ドル(約19兆9,209億円)純利益は30億3,000万ドル(約3,396億円)を誇ります。

 オンライン書店として起業から、はや20年強。今や世界中で50億以上の商品を出品。動画配信や、スマートスピーカーでも存在感を増し、「アマゾン・ゴー」といった実店舗までも手掛け始めています。

 その破壊力はすさまじく、書店のみならず多数の小売店舗が市場からの撤退を余儀なくされており、アマゾン進出の動向に戦々兢々とする企業も少なくありません。

 本書タイトルである「デズ・バイ・アマゾン」とはアマゾン恐怖銘柄指数のこと。
2012年に米国の投資会社が設定したインデックスで、アマゾンの台頭によって窮地に陥るであろう上場企業銘柄の株価を指数化したものです。

 ウォルマート、バーンズ・アンド・ノーブル、コストコ、JCペニー、メイシーズなど54社で構成されており、共通するのは収益の大半をリアル店舗から得ていること、そして扱う商品は基本的に他社製品であることです。54社の中には、アマゾンの参入報道が出るだけで、大きく株価を下げる企業も少なくないようです。

 その一方で、同投資会社はアマゾンの影響を受けず生き残っている企業で構成した「アマゾン・サバイバー」という指数も発表しています。

 いずれにせよ小売・流通業界のみならず、あらゆる業界でその影響力を拡大しつつあるアマゾンの戦略と、それに対抗する企業の戦略を紹介しつつ、いかに生き延びるかの方策を考察した一冊。
 主として米国での事例を中心にした内容ですが、日本企業の事例も踏まえた構成となっています。
 

【所感】

 

 7章からなる本書。アマゾンの最新動向に加え、迎え撃つリアル店舗の対抗策、配送の最前線の様子など豊富な内容で構成をされています。

   リアル書店「アマゾン・ブックス」、レジ無し店舗「アマゾン・ゴー」、ホールフーズ買収と実店舗への進出を加速しているアマゾンが次に目指しているのはファッションECへの進出。
 販促のため誕生した「アマゾン・エコー・ルック」というカメラを搭載したスマートスピーカーの発表。またもっともECに不向きと言われる家具にもAR技術を使って本格的に参入をしてきています。
 何か欲しいものがあれば、グーグルで検索、アマゾンで購入というスタイルが一般的になるなか、最終購買情報を握るアマゾンの立ち位置は圧倒的であり、グーグルすら畏怖を抱き始めている様子。
 ショールーム化、小規模化、体験型へ、そしてネットとの融合を加速するリアル店舗保有企業。

 次々と我々の想像を超える展開を行うアマゾン。競合企業の戦略、積極的にそのインフラに載ろうとする企業。それを取り巻く大きな技術革新の波などを丁寧に解説した本書は、大きく変わろうとしている流通最善の様子を知るには、最適の一冊となっています。

 さてそれでは一番知りたいアマゾンに打ち勝つ企業「アマゾン・サバイバー」になるポイントは何なのでしょうか。それは下記の3点だそうです。

 ①圧倒的な商品力で差をつける(消費者を惹きつける魅力的な商品の開発・販売)
 ②カスタマイズ&パーソナライズ(顧客ごとの好みにカスタマイズ。高級ブランドなら尚良い)
 ③痒いところに手が届くサービスの提供(サービスに徹底的に付加価値をつける)

 う~ん正直、目新しさはまったくないですね。結局これは全てニッチ志向。アマゾンに対抗するというよりも、市場が狭過ぎ進出メリットがない領域を目指す戦略の勧めと言うべきでしょうか。
それだけもはや既存企業には、生半可な方法では打つ手がないことの裏返しなのかもしれませんが。

 生活者目線で読めばワクワクも、小売・流通業者目線で読めば悩ましく。そんな感想を抱いた一冊でした。
 

                    日本経済新聞出版社 2018年8月22日 1版1