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2018- 9- 9  VOL.272

  

【概要】

 

 本書のテーマは「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。端的に言えば、AIやIoTなどの先端的な技術を活用して、新たな付加価値が生み出せるように、従来のビジネスモデルや組織を変革していくこと。

 アマゾンやウーバー・テクノロジー、エアービーアンドビーなど、デジタル活用と言われると、既存市場に参入してきたこれら新興企業が使用する「ツール」という印象を持たれる方が多いかもしれませんが、その認識は誤っているそうです。

 今やデジタル化、デジタル・トランスフォーメーションは、あらゆる企業が取り組むべき喫緊の課題であり、そこに選択肢はない(やるしかない、さもなくは淘汰)のだと著者達は説きます。
 

 これまでに成功を収めてきた企業であっても、まったく違う業界からライバルが突然現れ、競争環境を一変させ、既存ビジネスを破壊していく。なまじ成功体験があるゆえ、環境変化、ライバルへの対応が遅れ、事業撤退を余儀なくされる・・・・・。
 先ほど挙げた企業例を見るまでもなく、そんな動きが、あらゆる業界で起ころうとしています。

 自社が生き残るためには、どのようにデジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいけばいいのか。世界有数のコンサルティングファームであるマッキンゼーの手による本書は、そんな疑問に応えてくれる1冊。そしてその特徴は、特定の部署や部門、特定の商品やサービスといった小手先の変革を促すものではなく、全社規模でのデジタル・トランスフォーメーションへの取り組み方を記していることにあります。
 

【所感】

 

 10章からなる本書ですが、その全体の柱となるのは「WHY」「WHAT」「HOW」という3つの問いかけです。

「なぜ」企業はデジタル・トランスフォーメーションにとりくまなければならないのか。
 具体的に「何を」変える必要があるのか。
「どのように」デジタル・トランスフォーメーションを計画し実践していけばいいのか。

 主として1~3章までが「WHY」4~6章までが「WHAT」7~8章までは「HOW」というテーマで整理されており、そして残りの章で総括をしています。
WHY」「WHAT」「HOW」それぞれの問いかけについては、「マネジメントへの重要な問い」という表題で1ページずつのチェックリストが設けられており、自社の状況を棚卸しつつ、デジタル・トランスフォーメーションの実践で抑えるべきポイントの整理に一役買っています。

 また本書全体の構成としては、特定の業界を意図したものではありませんが、第4章では「自動車」「小売業」「金融業」「ヘルスケア業界」「建築物」「エネルギー業界」「通信・コンテンツ」「物流業界」「行政」といった業種については個別の課題についても触れており、今後の業界動向を知る上で興味深い内容でした。

 より実践的な内容となるのは4章以降で、デジタル・トランスフォーメーションに必要な個々の技術解説や、計画の立案方法、実践のポイント、組織風土の変革など幅広く網羅をしており、デジタル・トランスフォーメーションの指南書と呼ぶに相応しい内容となっています。

 しかし一読した感想は、この実践はとても容易ではないということ。一から会社を作り直すに匹敵する内容であり、相当の危機感、スピード感をもって取り組み、経営トップ層が強いリーダーシップを発揮しなければ、その実現はおぼつかないのではないでしょうか。

 それゆえ先んじた場合のアドバンテージは計り知れないものがあるのかもしれません。 
 

                    日本経済新聞出版社 2018年8月24日 1版1