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2018-09-30 Vol.275

 

【概要】

 

 セゾングループと聞いて、今やピンと来る方も少ないかもしれませんが、無印良品、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、ロフト、吉野家といった企業名を知らない方はいないのではないでしょうか。 

 

 これらの企業を含め、最盛期にはグループ約200社、売上高4兆円以上のコングロマリットを形成していたセゾングループ。

 

 しかしバブル経済の崩壊に伴う金融機関の不良債権処理により、巨額債務を抱えていた同グループは解体されていきました。

 

 同グループを率いていたのが、堤清二氏。

 セゾングループの解体が進んだのは、1998年頃から2003年頃ですが、当時の同氏に対するメディアの論調は「堤清二とは、巨額な債務を作り、同グループの破綻を招いた張本人。いわゆるA級戦犯」というものが大半を占め、現在でもその印象はあまり変わっていないのかもしれません。

 

 しかし冒頭で掲げた企業群に見られるように、彼による先見の明があって生まれた業態や店舗も少なくなく、「無印良品」の様に世界に打って出るなど更なる成長を遂げている企業もあります。

 

 今やネット取引の台頭、百貨店の相次ぐ閉店、中古売買の活況など、激変期にあり、なかなか先の見えない流通業界において、彼の示したビジョンや発想に学ぶ点も多いのではないか? 

 

 没後から今年の1125日で5年。改めてそんな堤清二氏の功罪に迫ったのが本書です。

 

【所感】

 

 7章で構成された本書。

「無印良品」「西部百貨店」「パルコ」というように、各業態に一章ずつを充てています。ただ比較的規模の小さな。ロフトやリブロ(書店)、ファミリーマート、吉野家などについては、「専門店」「チェーン・オペレーション」といった章に包括して記されています。

 

 各業態の誕生の経緯から現在までを時系列で追いつつ、当事者の声も交えながら、堤清二氏が何を考え、何を目指し、各業態を生み出していったのか、その思いに迫ります。

 

 例えば第2章で取り上げられている「西武百貨店」。セゾングループの祖業ともいえる同百貨店は「ラーメン・デパート」と揶揄される三流百貨店でしたが、他の百貨店では扱いのない欧州高級ブランドの誘致、美術館の併設、糸井重里氏起用のキャッチコピーなど、巧みなイメージ戦略もあり、独自の「格」を創り出すことに成功します。結果1987年度には三越を抜き、日本一の売上高を記録します。

 

 その反面、第1章で取り上げる「無印良品」では、西部百貨店で欧州高級ブランドを誘致し、企業イメージを高める手法で成功を収めたのにも関わらず「ブランドそのもの」を否定にかかります。

 同じ商品なのに、ブランド名が着くだけで、2割も3割も高値で売れるのは、お客様にとっていいことなのか?そんな思いが「無印良品」を生み出します。

 

 同氏は「無印良品」を「反体制商品」と呼んでいたそうで、百貨店事業での成功を収めつつも、現状を自己否定しつ、矛盾を抱えながらも更に新しい高みを目指そうとし辿り着いた一つの結論が「無印良品」であり、その結実こそ堤清二氏の経営哲学を象徴したものではなかったかと、著者は推測をしています。

 

 他にも「パルコ」や「WAVEAVストア)」「リブロ(書店)」の誕生も含め、その発想力の豊かさに驚くと共に、紆余曲折あったにせよ、その生み出した業態の大半が生き残っている事実には、氏の描いたビジョンが、いかに時代を先取りしていたものであったかを改めて知らされた次第です。

 

 天才的な発想をしつつも、いつしかワンマン化。借入依存の投資、きちんと利益確保できるマネジメント、オペレーション体制の不備といった同社破綻の事由にも踏み込んでおり、「セゾングループ」「堤清二」とは何であったのかを再考する好著となっています。

 

 現在、日本の二大流通業は、セブン&アンドアイグループとイオングループですが、二社の施策の数々にも、実は、セゾングループが標榜していたものが少なくありません。 

 セゾングループが標榜しつつも、出来なかったことを何故、セブン&アンドアイグループとイオングループは実現出来たのか? そんな観点から読んでも面白いのではないでしょうか。 

 

 

                         日経BP社 2018925日 第1版第1