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2018-10-14 Vol.277

 労働環境改善のため政府が提唱する「働き方改革」
時間外労働の上限規制導入、年次有給休暇の強制取得、不合理待遇の是正など、次年度から順次さまざまな施策が行われようとしています。書店にも関連図書が多く並んでいますので、お気づきになった方も多いかもしれませんね。

 本書もそんなコーナーに平積みされていた1冊。ただ少々、他の書籍とは趣が異なっています・

【概要】

 
 毎月10万人が閲覧する求人サイト「日本仕事百貨」https://shigoto100.com/  本書は同サイトを運営するナカムラケンタ氏の手によるものです。
 
 一般的な求人サイトと言えば、職種、勤務地、業種と言った募集要項の紹介が中心ですが、本サイトは体裁が変わっています。サイトを見ていただくと一目瞭然なのですが、まず飛び込んでくるのは、そこで働く人々の様子。
 職場を訪ね、経営者や従業員の方へのインタビューを元に求人の記事にまとめているそうです。

 なぜこんなに手間のかかることをするのか? 著者はこう語ります。

 仕事する上で当然、給料や福利厚生は大事な要素ですが、本当に大切なことは、その仕事に共感できるかどうかではないのか?と。

 何を思い創業をしたのか? 今はどんな仕事をし、これからどんな仕事をしようとしているのか? この仕事にはどんないいところがあり、どんな大変なことがあるのか。
 そんな思いや事実をきちんと理解できれば、きっと納得して働くことが出来るのではないか?そんな思いから生まれたのが、同サイトだそうです。 

 冒頭に「働き方改革」について触れましたが、その根底にあるのは、生活や働き方は多様化しているのに、そこに労働環境が追い付いていないことにあるというのが通説ですが、仕事と生活はそもそも分離をされなくてはいけないのでしょうか?

 植物にとって生きると働くに区別がないように、人も「生きるように働く」ことが出来るのではないか。そんなことを考えてみたのが本書だそうです。

【所感】

 

 同サイト立上げの経緯に始まり、著者が自身のサイトに掲載するために行ったインタビューの中で、特に印象深い方々を取り上げ構成された本書。

 たくさんの取材をするなかで、いつしか一本の木を眺めているような気分になってきたと著者は語ります。取材で聞いた、たくさんの言葉はあたかも「葉っぱ」の様。
 でもこの「葉っぱ」は実はバラバラのようで、何か一つの枝に、幹に、根っこへと通じているのではないか。そこに何か生き方の根底に繋がるようなものがあるのではないか。

 そんな思いは構成に表れています。植物が成長するためには、まず種を蒔き、水をやらねばなりません。そして発芽へと向かいます。
 その過程を、種を蒔く1章から森になる5章までという流れで構成しています。
 
 登場人物や紹介される業種もバラエティに富んでいます。
硝子店、衣装製作会社、建築事務所、フレンチレストラン、珈琲店 etc みなユニークな経歴を持ちつつも自身の仕事に真剣に向き合う様子が誌面からも伝わってきます。
 
 よく考えれば、日本にはこんなにもたくさんの職種や業種があり、厳しい面もありながら、それなりにみなビジネスとして成り立っていることって、実はすごく恵まれたことではないのか?

 ただ自分自身もそうですが、なかなかそんなところには目が向きませんよね。仕事は生活の糧を得るための手段であり、やりたいことよりやれることが大事。より効率的に願わくば高い給与を得たい。
 そんな凝り固まった常識から解放してくれるのが同サイトと本書と言えるのかもしれません。 

 三度「働き方改革」の話を持ち出して恐縮ですが、働き方改革のゴールは「社員の幸せ・成長と会社としての生産性・創造性の向上」にあるそうです。

 社員の幸せとは何か? 実は本書で言う「生きるように働く」ことにその本質はあるのではないか?そんなことを感じた1冊でした。
 厳密にはビジネス書のカテゴリーからは外れるのかもしれませんが、興味深き内容でした。
 

                   ミシマ社 二〇一八年十月一日 初版第一刷発行