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【概要】

 
 著作を出されている会計人の方は、決して少なくありませんが、読み易さ分かり易さにおいて、群を抜いていると思われるのが本書著者である田中靖浩氏。
 そんな著者の新作は、会計の本質について世界史(欧米史)を紐解きながら迫った意欲的な一冊。

 一見無味乾燥に見える会計の世界が、その発展を歴史に紐づけることで、ここまで面白く描かれるとは驚きの内容でした。

 イタリア、イギリス、アメリカを舞台に、銀行や簿記の誕生に始まり企業価値評価からファイナンス理論に至るまで、おおよそ500年に渡る会計の発展史をひとまとめ!
 帯にある「会計エンタテインメント爆誕!!」に偽りなしの仕上がりとなっています。 

【所感】

 

 3部9章から構成された本書。
 イタリアからオランダを中心に「簿記と会社」の発展に触れた第1部。イギリスからアメリカを中心に「財務会計」の発展に触れた第2部。そしてアメリカを中心に「管理会計とファイナンス」の発展に触れた第3部。

 各部の内容も、それぞれ「銀行、簿記、会社」「利益、投資家、国際」「標準、管理、価値」に分けて1章ずつを配しており、読み易く構成されています。

 更に画期的なのは、1部には「3枚の絵画(トビアスと天使、最後の晩餐、夜警)」、2部には「3つの発明(蒸気機関車、蒸気船、自動車)」、3部には「3つの音楽(ディキシー、聖者の行進、イエスタディ)」と称したエピソードを盛り込んでおり、経済的な面のみならず文化的な面からもアプローチした立体的な構成となっており、読み飽きることがありません。

 また3部×3章×3つのエピソードと要点を全て3つで整理している点も読み易さの一助となっているのではないでしょうか。

 さてまず冒頭に誕生するのは、著名なレオナルド・ダ・ヴィンチ。ではなく彼の父ピエロ・ダ・ヴィンチ。
 公証人という当時非常に社会的地位の高かった職業についていたピエロ・ダ・ヴィンチ。当時なぜ公証人という仕事が重要であったのか?その理由は記録を残すことの重要性にありました。
記録という行為から銀行、簿記の発展へと話を進めつつ、その一方で父親と同じ公証人の職につけなかったレオナルド・ダ・ヴィンチの辿った生涯にも触れ、一気に本書に引き込まれていきます。

 以降も、メディチ家、東インド会社、チューリップ・バブルといった我々も良く知る史実に沿って、近代、現代へと展開され、最終章ではなんと、マイケル・ジャクソンまで登場。
ビートルズの著作権を購入した彼の行為の意味するところから「価値(企業価値)」という概念に触れ締めくくりとなります。

 いやいや~欧米史500年一気読みの
爽快感と、会計制度発展のターニングポイントを史実とうまく合わせたその構成は、まったく見事としかいいようがありません。
また専門用語の多用を控えながらも、要所を押さえた端的な記述もとても好感を覚えるものでした。
 
 財務や会計知識を身につける重要性については、今更説かれるまでのことはないことかと思いますが、身につけるためには、まずは興味や関心を持つことが第一歩。
 その点、このような体裁で大局を眺める事や、会計というものの発展も所詮人の営みの一つに過ぎなのだと気づくことで親近感を覚え、常に身近なテーマとして考える機会も増えるのではないでしょうか。もちろん一般教養として読むにも十分値する内容だと思います。

 400頁を越えるボリュームですが、経営者のみならず、管理職から一般のビジネスパーソン、学生の方まで、是非読んでいただきたい一冊。超お薦めです。

                   日本経済新聞出版社 2018年9月25日 1版1刷