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【概要】

 
 みなさまは「ほぼ日」https://www.hobonichi.co.jp/ という会社をご存じでしょうか。
 同社で最も有名な商品が「ほぼ日手帳」。2001年発売のベストセラー手帳。2018年版は80万冊以上も売れたそうです。

 ほかにはWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」https://www.1101.com/home.html の企画運営やオリジナル文具、雑貨の開発販売を手掛けています。
 創業から20年あまり、2017年3月には東証ジャスダックへ上場を果たしています。
 そんな同社を主宰するのは、糸井重里氏。多数の名コピーを生み出したコピーライターであり、作詞、ゲームデザインなどマルチな才能を発揮してきたクリエイターです。

 70年代~80年代のコピーライターブームを巻き起こした第一人者から、上場企業の社長に。本書は、そんな「経営者 糸井重里」へのインタビューをまとめた1冊です。

 経営者としては新参者だからと語る糸井重里氏ゆえ、タイトルには(経営について語るなんて、まだまだなんです)「すいません」とちょっと控えめなタイトルがついていますが、なかなかどうして。
「経済人」である前に「生活人」でありたいと語る糸井氏の地に足の着いた経営哲学が、ちりばめられています。

【所感】

「事業」「人」「組織」「上場」「社長」5章に分け5つの切り口から、同社経営の秘密に迫った本書。川島氏からの質問に糸井氏が答える形で構成をされています。

 各章ごとに川島氏が、インタビューの目的を記し、章末では内容のとりまとめをしている丁寧な体裁で、そこだけを読んでも十分内容は理解できるのですが、やはり肝要なのはインタビュー部分。ユニークな経営スタイルが次々と明らかにされていきます。

 〇会議や企画書は不要。自分がお客さんになったら本当に喜ぶかを本気で考える。
 〇2018年春から1日の労働時間は7時間。毎週金曜は自分のため、自由に使える時間に。
 〇人に喜ばれているという実感が人を動かす。
 〇出来る人、経験豊富な人でなく「いい人」を募集、採用する。
 〇評価の一番の基軸はリーダーシップ。
 〇「誠実」と「貢献」が会社の伝家の宝刀。
 〇会社の行動指針は「やさしく」「つよく」「おもしろく」
 〇創造の3つの軸は「動機」「実行」「集合」
 〇組織図は人体模型。人の内臓のように、全てがつながって役割を果たしている。
 〇上場を目指したのは「子どもの自由」からの脱却。
 〇社長がいなくても大丈夫にすることが、社長の役割  etc 

   拾いあげれば、きりがありません。一見非常識に思える施策や発想なれど、そこに込められた強い思いに色々と考えさせられます。

 またコピーライターとして数々の名文句を生み出してきた糸井氏ゆえ、本書には珠玉の言葉も溢れていました。なかでも個人的に気に入っているのは、上場前は「いつかやろう」と先延ばしにする部分があったところが、上場してからは「いつやろうか」と考えるくせがついてきたとのくだりです。

 「いつかやろう」と「いつやろうか」。
 同じ文字を使いつつも、並びを変えたけで自らの心情の変化を端的に表したこのフレーズに、やはりただならぬ糸井氏のセンスを感じ、とても印象に残った箇所でした。

 「ほぼ日」や「糸井重里」氏に関心がなくとも是非読んでいただきたい1冊。
創造とは? 仕事とは? 組織とは? 経営とは? 必ずしや何らかの示唆を受けること間違いなしの内容。超お薦めです。


                   日経BP社 2018年10月22日 第1版第1刷発行