IMG_30262018-11- 4 Vol.280

 
【概要】


「イノベーション」と聞いて、みなさまはどんな印象を抱かれるでしょうか。

 ①イノベーションとは新事業開発である ②イノベーションとは技術革新である ③日本企業は改革が得意だが、創造は苦手だ ④大企業にはイノベーションを興せない ⑤とんがった個人だけがイノベーションを興せる
  
 実はこれらは全て、誤解であるのだと著者達は説きます。これからの新常識は次の5つ。

 ①本業でこそイノベーションが求められる ②イノベーションは技術でなく価値を生み出す ③日本企業は改善だけでなく創造も得意だ ④大企業でもイノベーションは興せる ⑤組織的な取り組みがイノベーションを興す 

 その理由を明かしつつ、「どうすれば人や組織はイノベーションを興せるようになるのか。」そんなテーマに迫ったのが本書です。

 著者は経済産業省「フロンティア人材研究会」を機に生まれた一般社団法人Japan Innovation Network(JIN) https://ji-network.org/ の代表理事と専務理事を務めるお二人。同組織は主として、大企業、中堅企業のイノベーション加速を促進することを目的としています。
 2013年7月に発足した同組織。本書は活動開始から5年を経て得た知見をまとめた1冊ともいえます。
 

【所感】

 前掲したJINでの活動を通じ、著者達は「我々はイノベーションを興せないのでのはない。どうやってイノベーションを興せばいいのか、その方法を知らないのだ」ということを強く実感したそうです。

 ややもすればイノベーションというのは、一部の天才や変わり者、傍流にある者が興すという印象を抱きIがちですが、それは誤り。
 相応の練習を積めば誰でもイノベーションは興せるものであり、むしろ属人的な活動に依存するのではなく、リーダーを立てプロセス化し、持続的で再現可能な組織活動にしなければならないのだと著者達は警告を鳴らします。

 その意味で、本書はイノベーション活動の入門書的な位置づけとも言えます。

 イノベーション活動とは、新たな価値提供であり、提供価値=構想×実行 という等式で表すことが出来るそうです。
 構想とは事業創造ステージであり ①課題の発見 ②解決策のコンセプト化 ③ビジネスモデル化というプロセスを経ます。一方実行とは事業立ち上げステージであり、①事業プラン策定 ②資金調達 ③実事業立ち上げ ④発展に向けた活動展開 というプロセスを経ていくそうです。

 本書では概ね、この流れに沿って、その背景や前提条件を明かしたのち、「イノベーション・コンパス」や「ビジネスモデル・キャンパス」といったツールを紹介しつつ手順の解説を行っています。

 正直なところ、実企業での具体例が紹介されているわけではありませんので、本書を読み進めてもワクワク感や高揚感などを味わうことは、ほぼありませんし、正直提言の有効性の検証も定かではありません。

 ただイノベーション活動を企業における特異な活動ではなく、日常的に取り組むべき普遍的活動と捉えようとするその意義は高く、事実日本のみならず、ISO(国際標準化機構)でも「イノベーション経営の標準化」についての取組が始まっているそうです。そんな背景もあり改めてイノベーション活動につき考え、実施の構想を練る一助になることは間違いなしの1冊と言えます。


                   日本経済新聞出版社 2018年10月17日 1版1刷