IMG_31542018-11-18 Vol.282

 
【概要】


 戦後最長の好況期が続いていると言われる現在の日本経済。経済は好不況の波を繰り返し、どちらか一方のみに振れ過ぎることはないというのが、これまでの通説でした。

 しかしながら今後日本は大きな二つの波に飲み込まれようとしています。それは向こう10年~20年でやってくる「AIによる自動化の進展」という波と、向こう70年~100年でやってくる「人口減少」という波。
 この2つの大きな波は、この国の社会や経済の仕組みのみならず、我々の仕事や給料そして生活を大きく変えようとしています。

 これから日本で何が起ころうとしているのか。それを正しく認識し健全な危機意識をもつこと。そしてしかるべき変化に備えること。そんなことを目し本書は記されています。 

【所感】

 6章で構成された本書。1~2章及び5章では、主として人口減少の動向や現状、対策について記され、3~4章及び6章では主としてAIの進展がもたらす変化について記されています。

 やはり日本の最大の懸念事項は人口減少。
 現在の出生率で推移すれば、日本の総人口は、2029年には1億2000万人、2042年には1億1000万人。2053年には1億人を割り、2063年には9000万人まで減少することが想定されています。
 そのインパクトは凄まじく、産業構造や消費構造の変化、社会保障負担の増大、労働人口の減少がもたらす日本の行く末には、暗澹たる気持ちを抱かざるを得ません。

 一方AIの進展も明るい未来ばかりではなく、従来の職業の概念を根本から変えてしまうことで、更なる格差社会を生み社会に不安定さを増大させる懸念が大きく、最近は、負の要素の方が注目されることが多いように思います。
 
 さてそのような背景を踏まえ、著者はこのような提言をしています。
 人口減少、少子化対策に対しては、「子供への諸手当を現金給付から現物給付にかえる」「保育施設の整備」「教育費の負担軽減」「長時間労働是正」「大企業の本社機能を地方へ分散」の5点を挙げ、これらの取組を国や地方公共団体、大企業が真剣に取り組めば、10年程度で出生率を2.0倍にすることは可能だとしています。

 一方AIとの向き合い方に対しては、「AI・ロボット税」の導入で、急激な自動化の促進を抑制すると共に失業者の再教育や産業育成のための財源と時間稼ぎをすること。
 逆に医療や介護の世界では積極的に導入をし、社会保障費の圧縮を図ることを挙げています。

 そしてAI時代に必要なスキルについては、一般的に「人間的資質」「企画発想力や創造力」「対人間関係力」などが挙げられる状況には疑問符を投げかけています。
 AIに負けない人間力を磨くため「他人への共感力」を挙げる識者もありますが、将来的にはカウンセラーなどの役割もAIはこなすようになり、人としての主観をもたないAIの方がかえって適切なアドバイスをするのではないかと著者は記しています。

 また著者は大学進学にも疑問符をなげかけます。今後大量失業が起こるのはホワイトカラーの世界。これまでのように偏差値の高い大学から、大手企業へ入社し高収入を得るという方程式は完全に崩壊をしていく。
 今後は「ホワイトカラー」「ブルーカラー」という分類はなくなり、職業は「クリエーター」と「サーバー(決められた仕事をこなす人)」という区分になり、これまでの就職観や職業観も大きく変えざるを得ないと語ります。

 これから我々に必要なことはAIとの共生であり、そのためには「人間が複雑であり続ける努力をすること」が重要だそうです。

 やや抽象的な表現ですが、「単純で分かり易いスキルやノウハウはすぐAIにとって代わられますよ」という警告と個人的には理解をしました。特に本書では触れられていませんが、最近良く聞くアート志向というのもその背景にはあるのかもしれませんね。
「人間が複雑であり続けるため、自己研鑽と試行錯誤、様々な経験を積むこと」著者はそう結んでいます。

                       東洋経済新報社 2018年11月8日発行