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【概要】


 アンダークラス。その定義は時代背景や識者により異なりますが、概ね共通している解釈は、永続的で脱出困難な貧困状態に置かれた人々のこと。
 本書において著者は、我が国における非正規労働者からパート主婦、非常勤の役員や管理職、資格や技能をもった専門職を除いた人々としており、その数なんと930万人。
 これは日本の就業人口のおよそ15%を占めており、階級構造のなかの重要な要素を占めるようになっています。

 その平均年収はわずか186万円。貧困率(所得が国民の平均値の半分に満たない人の割合)は38.7%のものぼるそうです。
 
 名目GDP世界3位。家計の金融資産残高は1,900兆円に達するとも言われる日本。諸外国よりも格差が少なく、比較的安定した社会構造が維持されていると思われてきましたが、随分とその実態は異なるものとなっているようです。
 このままアンダークラスが放置され、さらに拡大するような事態になれば、間違いなく日本は危機的状況に陥ってしまいます。

 アンダークラスの実体を明らかにすること。その解決に適切な措置を行う重要性に理解を深めること。そんなことを目し、本書は記されています。

【概要】

  8章で構成される本書。1章から2章ではアンダークラス誕生の過程、アンダークラスの定義などが記された後、3章で日本の現状を分析します。そこでは男女 20歳~59歳 60歳~ と4つのパターンに分類した後、各層につき、以降の章で考察がされています。

 本書の主たるデータは、SSM(社会階層と社会移動)研究会 http://www.l.u-tokyo.ac.jp/2015SSM-PJ/index.html より引用をされており、多様な観点からその特性が浮かび上がってきます。但しサンプル調査で全数実施ではありません。
 
 分類別に各特徴がみられます。

 ①59歳以下男性アンダークラス-大学進学率28.3% 職種はマニュアル職57.9% 未婚率66.4%、個人収入213万円 
 ②59歳以下女性アンダークラス-大学進学率27.3% 職種はマニュアル職25.1% 事務系サービス系が同程度ずつ 未婚率56.1%、個人収入164万円

 ③60歳以上男性アンダークラス-大学進学率21.5% 職種はマニュアル職56.2% 未婚率5.0%、個人収入293万円
 ④59歳以下女性アンダークラス-大学進学率7.7%   職種はマニュアル職35.9% サービス系39.7% 未婚率9.0%、個人収入193万円

 
また59歳以下男性アンダークラスでは、傾向として、出身家庭が貧困。家族関係に問題があり、教育環境に恵まれず成績も悪くいじめられた経験も多いこと。59歳以下女性アンダークラスでは出身家庭の貧困さは、男性ほど多くないものの、他は同様の傾向、ただ女性は結婚後の離死別を機にアンダークラス化する傾向の強さがうかがえるそうです。

 ややもすれば、アンダークラスというのは、怠惰で自助努力もせず、仕方なくそうなってしまったのだと見られがちですが、その背景は一様ではありません。また一旦そのクラスに陥ってしまえば、自力で抜け出ることは非常に困難であり、世代間で連鎖する傾向も強いものがあります。

 本書では(著者の別書にて提示済とのことで)具体的な解施策の提示はなく、アンダークラスが支持するような政党の出現を期待する程度の記述があるのみです。

 著者は我々に、アンダークラスへの転落は、誰にでも起こり得る事態であり、自身がそのクラスにいないことは、たまたまに過ぎないこと。ゆえにそういった一定層の存在を認識し理解を深めることを読者に呼び掛けています。人は往々にして、経済的レベル、教育レベルの似通った職場やコミュニティを一にすることが多く、意識をしなければなかなかアンダークラスの存在に気づかない点を危惧しています。

 本書に記されているわけではありませんが、非婚、子供を持たないという選択は、社会への復讐なのだとの説を聞いたことがあります。確かに59歳以下男性アンダークラスには、そんな傾向もあるのかもしれません。しかしながら経済的困窮は、もはや選択する余地すら与えていないのでは、そんな懸念を抱きました。
 アンダークラスは、そこに属する人々固有の問題ではなく、国全体で取り組むべき重要課題であるとの認識をもつこと。特に若年層アンダークラスへの適切な対処は、少子高齢化対策、生産人口確保の点からも見逃せない課題であることの理解こそ、まずは我々に必要なことかもしれません。
 

                      筑摩書房 2018年12月10日 第一刷発行