IMG_36232019- 2- 3 Vol.293

  
【概要】


 経営・マーケティングコンサルタントとして知られる神田昌典氏の最新作。お好きな経営者の方も多いのではないでしょうか。

 タイトルにあるインパクトカンパニーとは「経済的に成長しながら同時に、事業を通じて社会問題の解決を目指す中小企業」のこと。
 大企業やベンチャー企業ほど目立つ存在ではありませんが、これからの社会にとって決定的な影響力(インパクト)を及ぼす企業。
それがインパクトカンパニーなのだと氏は定義をしています。
 
 またその特徴は0ベースで事業を起こすベンチャーとは違い、成熟した既存事業から新しい成長を創り出すことにあり、自社のビジネスモデルを劇的に変化させていることにあるそうです。
 そしてそのターニングポイントとなるのは、創業から概ね20年。
既存事業が頭打ちとなったり、会社存亡の危機に立たされたことをきっかけに大きく変化をしたケースが多いようです。

 日本にある企業421万社のうち、99.7%を占める中小企業。それは全国にあまねく存在し、地域経済にとって欠くことのできない存在でもあります。そんな企業の進化成長こそが、日本の浮沈を担っているといっても過言ではありません。

 どうすれば、そんなインパクトカンパニーへと自社を生まれ変わらせることが出来るのか。そのために必要な「ビジネスモデル」の構築と「勝ちパターン」を実践するためのスキルについて、解説をしたのが本書。
 表紙裏には「神田昌典の企業論、20年の集大成」との文字が踊ります。

【所感】
 
 6章からなる本書。前半3章では、今後の未来予想を踏まえつつ「インパクトカンパニー」へと進化するポイントにつき成功事例を交えての解説を。後半3章では、そのために必要なツールやスキルについて解説を行う構成となっています。

 まずは前半3章。1章では未来から選ばれるのはゲーマー社長とのことで、旧世代を「ウルトラマン世代」、新世代を「ポケモン世代」「ドラクエ世代」とし、新しい価値観を持つ世代の台頭がはじまっていること。目を向けるべきエリア。新旧世代が手を組む展開の必要性につき言及をしています。

 2章では「複式簿記」以来の発明とされる「ブロックチェーン」の影響力について触れ、3章では、これまで王道とされていた 請負型→コンテンツ型→プロダクト型→コミュニティ型→ショップ型というビジネスモデル変革のパターンが通用しなくなっていること。
そこでプラットフォームという概念が不可欠なことを明かします。

 章の折々で紹介される事例から、成功企業には、どんなに小さくても地球的規模視点をもってビジネス展開をしている点、ローカル企業ゆえ培った現場の知恵を、誰でも活用できる技術へ昇華している点などを指摘して前半は締めくくられています。

 後半3章は実践編となりますが、まず4章で触れるのはデジタルツールの活用。グーグルアナリティクス、サーチコンソールといったといったツールを使用し、中小企業といえど廉価なコストで取り組めるデジタルマーケティングの手法につき解説をしています。
 
 5章では、なりたい未来をストーリー化する手法について触れています。マーケティング、ブランディングなど、様々な分野で不可欠と言われるストーリーですが、その概念は曖昧。そこで氏が提唱する「フューチャーマッピング」という手法を使ったストーリー構築につき解説をしています。
 4章までは、比較的デジタル寄りの記述が多い中、この章は一転アナログ。1枚のフォーマットに引いた線に起承転結を盛り込むことで、ストーリーを作成する手法を紹介しています。これは本書が初出でなく氏が別著などで何度も提唱している内容であり、本書での引用については評価と好みが分かれるところかもしれません。

 最後の6章では、顧客を創造するたった一つの手法として、LP(ランディングページ)の重要性について触れています。LPとは自社サイトにおいて見込客が最初に触れるページ。そこで必要となるコピーライティングやシナリオ構成のスキルについてまとめています。
 全編を通じ平易かつキャッチーな文書で綴られた本書。さらっと目を通せてしまいます。紹介された手法もシンプルなもので、ゆえに拍子抜けしてしまうかもしれません。

 どうしてもこういった著者の書籍は色眼鏡で見がちですが、まずは先入観を捨て素直に氏の提言にしたがってみることを、本書においてはお薦めをしたいと思います。少なからずの気づきを得られることは間違いないありません。各章末に記された読者への質問について手を動かし書いてみる読み方を氏も推奨しています。

                   PHP研究所 2019年2月5日 第1版第1刷発行