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【概要】

 年初 私財から1億円をプレゼントすると公言し話題となったZOZOの前澤社長。その言動には賛否両論あり、同社も株価下落、出店メーカーの退店と話題はつきませんが、それだけ着目を集めるのは、今や日本最大級のファッションオンラインモールであり、その事業規模の大きさやインパクトが広く認知されていることの裏返しなのかもしれません。

 百貨店~総合量販店~カテゴリーキラーへ。
日本や世界のファッション流通業界の変遷を見ても、今やその主役はオンラインへと移行していることは誰の目から見ても明らかであり、これまでのビジネスモデルが大きく変わろうとしているのは異論のないところではないでしょうか。
 低価格指向、購買意欲の低下。もはや金額ベースでは、斜陽産業ともいわれるアパレル業界ですが、それでも小売の世界においては食品につぐ巨大なマーケットであり、日々熾烈な生存競争が行われている業界でもあります。
 今後アパレル業界はどこに向かい、どうなっていくのか。
「ファッション流通革新10年周期説」を唱えるファッション流通コンサルタントである著者が、そんな課題に迫ったのが本書です。
 
【構成】
 
 6章で構成された本書。前半3章では、アパレル業界固有の事情や動向を解説しつつ、ファッション流通革新10年周期の根拠を明らかにする他、欧米の先端事例などを紹介しています。
 後半3章では、今や巨大市場となったオンラインショッピングが抱える課題と最新のテクノロジー動向を追いながら、今後のアパレル業界の未来を展望していきます。

【所感】

 1960年代~上質で豊富な品揃えを実現した百貨店が主役。1970年代~低価格化を志向した総合量販店が人気に。1980年代後半~更なる価格破壊を進めたカテゴリーキラーの登場。1990年代後半~高品質低価格を実現したSPAの台頭。2000年代後半~ファストファッションによる高デザイン商品の低価格化が実現。

 なるほど著者の唱える10年周期説によれば、概ね上記の様にアパレル業界は変遷をしてきており、実体験として感じてらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 欧米のトレンドからややタイムラグのある日本。そこで現在の欧米のアパレル業界に目を向ければ ①ウルトラファストファッションとでも呼ぶべき更なる低価格化の進行 ②オンライン販売、店舗受取の推奨 ③アウターからインナーウェアへの注力シフト ④店舗での無料体験を提供する業態の躍進 などの特徴がみられるそうです。

 総じて言えることは、インターネットをベースにテクノロジーを駆使し、とにかく消費者の利便性を徹底的に追及することに各社が叡智を絞っていることでしょうか。

 日本の事例も豊富に紹介されている本書。
 欧米からややタイムラグがある日本とはいえ、オンラインでの販売は言うまでもなくコーディネートのアシストや、定額制による洋服のレンタルサービスの提供も行われていますし、今や自身のクローゼットを可視化するサービスや、クリーニングや洋服を預かるトランク収納といった購買後の利便性を高める様々なサービスまで提供され始めていることには驚かされます。

 アパレルと言えば、商品自体の付加価値(ファッション性やコストパフォーマンス)を高めることに目が向きがちですが、購買前の意志決定支援から、購買後の管理やメンテナンスまで、洋服をキーにトータルにライフスタイルをサポートし、着る楽しさや喜びを改めて訴求できる企業こそが、次代のアパレル業界を台頭する。そんな感想を抱いた一冊でした。

                   日本経済新聞出版社 2019年2月20日 1版1刷