IMG_37332019- 3-17 Vol.299

【概要】

 長い長いタイトルのついた本書。著者は2015年ギリシャの経済危機時に財務大臣を務めた経済学者。EU当局が主張する財政緊縮策にノーを唱え大幅な債務帳消しを主張。就任期間はわずかでしたが、その強硬な姿勢やスキンヘッドの風貌も相まって世界に強烈な印象を残しました。
 そんな著者が記した本書は、タイトルにあるように十代半ばの娘に向けて経済について語った1冊。

 長らく経済学を教えてきて立場から、若い人たちにもわかる言葉で経済を説明出来なければ、教師としては失格だと常々思っていたと語る著者。
 誰もが経済について、しっかりと意見をいえることが、いい社会の必須条件であり、そんな一助になればとの思いが本書を記した理由とのことです。

【構成】
 
 7章からなる本書。
 第1書のテーマである「格差」から始まり、以降「市場経済の誕生」「利益と借金の関係」へと展開されていく本書。各章のテーマは独立しているものの、全体の構成は連続していますので、順に読み進めるのがお薦め。経済史を踏まえつつ、仮想通貨やAIなど最新のテーマにも触れています。

【所感】

 著者によれば、わずか9日間で書き上げたという本書。決してやっつけ仕事ではなく、それだけ著者としては筆を取りたいテーマだったのでしょうね。

 今や世界中で最も関心の高いテーマともいえる「格差」。格差が生まれた理由は「農業の誕生による余剰の発生」と「言語の誕生」と鮮やかに解き明かした1章から、一気に引き込まれていきます。

 本書の秀逸さは二つあると思います。

 一つは「資本」や「資本主義」という言葉を一切使わず、「資本主義」は「市場経済」「資本」は「機械」や「生産手段」と言い換えるなど、極力専門用語を使用しない点。
 その理由を著者は、言葉につきまとうイメージのせいで本質が見えなくなってしまうからだと説明しています。

 もう一つは多彩な引用。戯曲「ファウスト」や「オイディプス王」はもとより小説「フランケンシュタイン」や映画「マトリックス」まで。
 いわゆる身近な娯楽作品からテーマを拾いながらも、違う観点から掘り下げていくことで、飽くことなく読み進めることが出来ます。

 一貫しているのは、経済を「身近なテーマ」として捉えることを促す姿勢でしょうか。

 著者は、経済学は「経済モデルが科学的になればなるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていく」傾向があり、理論が科学的に洗練されれば、より理解しやすくなる物理学や工学とは反対の性質をもっていると記しています。

 その点が経済学を我々から縁遠いものとしているところに危惧を覚えており、経済学を身近なテーマとして、常に考える習慣をもってほしい。そんな思い溢れた1冊でした。
 各媒体で絶賛も納得の1冊。お薦めです。

                    ダイヤモンド社 2019年3月6日 第1刷発行