2019- 4- 7 Vol.302IMG_3828

【概要】

 

 宮崎県宮崎市にある KIGURUMI.BIZ株式会社。
ゆるキャラなどに代表される、いわゆる「着ぐるみ」を製造販売しています。http://www.kigurumi.biz/

 本書著者は同社の代表の加納ひろみさん。2004年、ご主人と営む造形美術製作会社の一部門として着ぐるみ製作をスタート。紆余曲折を経て2012年に法人成りをしています。

 地方都市にある小さな企業ながら、国内はもとより海外からもオーダーの入る同社。
なんと従業員は全て女性だそうです。「着ぐるみ」という扱う製品のユニークさもさることながら、女性が働きやすい職場を目指し手がけた数々の施策が評価され、経済産業省が選定する新・ダイバーシティ経営企業100選にも選出されています。

 本書は、そんな同社の沿革や取組について記された1冊。
かつてシングルマザーでもあった著者の手による本書は、ご自身の半生も交えて綴られており、ビジネス書の枠に収まらない読み応えある1冊に仕上がっています。

【構成】

 4章からなる本書。KIGURUMI.BIZ誕生までの経緯と、著者自身の半生について記された1~2章。法人成りから、試行錯誤を繰り返し事業を軌道に乗せていく3章。ゆるキャラブームの終焉とリストラを経て、海外へと販路を伸ばしていく4章で構成されています。

【所感】

 知られざる「着ぐるみ」製造の工程。ユニークな人事施策。SNS活用による低コストな営業活動。海外企業からの受注。地方の小さな企業が工夫を重ね、成長していく様子は大変興味深く参考になる点も多い本書。またシングルマザーとして苦難を重ねた様子も、働く女性ならみな共感出来る点も多いのかもしれません。

 ただ個人的に一番注目すべきは、著者の御主人なのではないかとの思いにいたりました。
「着ぐるみ」という製品、女性経営者、女性が生き生き働ける企業。そういった面を強く打ち出した方が書籍としてはインパクトがありますし、事実同社の躍進は、著者の活躍に負うところが多いところは間違いないのでしょう。
 実は著者が同社の代表となったのは2017年。それまでは同社代表はご主人が務めています。本書においてご主人が登場する場面は、さほど多くはありませんが、印象に残る記述がいくつかあります。

 シングルマザーとして福島で働いていた著者を縁あって宮崎に呼び寄せたご主人。
 共に仕事をする中で2つのことを繰り返し著者に語ったそうです。1つ目は「できますか?」と尋ねられたらまずは「できます」と答えること。2つ目は「グズグズしないこと」。

 そして代表を引き継ぐに際し、それまでご主人に教わった中で一番大切なものは「正しさ」であったと著者は記しています。
「正しさ」ビジネスにおいては結局それが一番の近道。何かをごまかしたり、面倒なことから逃げたりすることは、結局進化のスピードを落としてしまうからと。

 それを集約したともいえるのが「正しい商品は正しい場所から生まれる」との同社ポリシー。その徹底こそが同社の運営や様々な施策を可能にし、成長を促してきたのでしょうね。

「着ぐるみ」というニッチな業界動向。小さな企業が描く経営戦略のあり方。はたまた最近話題の「働き方改革」の施策を考えるヒントなど、示唆に富んだ本書ですが、そういった実用面を差し置いて通読しても楽しめる本書。全編通じ著者の強い「着ぐるみ」愛が溢れてます。 
 

 

                   日本経済新聞出版社 2019年3月25日 1版1刷