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【概要】

 

 GAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc)の台頭著しいプラットホームビジネス。
 いまや米国を代表するこれらIT企業のサービスは、もはや我々の生活には不可欠な存在となっています。
 こういった企業の価値の源泉は、製造設備や営業拠点といった有形資産にあるのではなく、システムやノウハウといった無形資産にあります。そしてそういった無形資産で成り立つ企業は易々と国境を超え、タックスヘイブン(租税回避地)にその本拠地を移します。
 OECD(経済協力開発機構)の試算によれば、米国IT企業などがタックスヘイブンへの移転により行う国際的租税回避は全世界の法人税収を1,000~2,400億ドル(約10~24兆円)を失わせているそうです。これは全世界の法人税収の4~10%にも達するそうです。

 このようなデジタル経済とでもいうべき、あらたな経済活動の登場は、これまでのビジネスの在り方のみならず、課税の在り方についても変革を迫っています。

 本書はそんなデジタル経済の課税の在り方について論じた一冊。
冒頭であげたGAFAといったプラットホームビジネス以外にも、シェアリングサービスやフリーマーケットなどの課税問題や、マイナポータル、AIとBI(ベーシックインカム)など幅広いテーマに言及しています。

【構成】

    全10章で構成された本書。前半5章は主として法人の租税回避行為に着目をし、後半5章は個人にスポットを当てた構成となっています。雇用の概念が変わる中、公正な課税とはどうあるべきなのか?AIがもたらす大失業時代と更なる格差拡大にどう対応すべきかなどがテーマとなっています。

【所感】
   
   本書のテーマであるデジタル経済とは、いったいどんな経済活動のことを指すのでしょうか。著者はデジタル経済がもたらす変革として以下の4点を挙げています。
 ①モノからサービスへの転換   
 ②ユーザーの参加するプラットホームという発明 
 ③企業価値の大部分が無形資産となったこと 
 ④無形資産の生み出すビッグデータ、AIという存在

 そんなデジタル経済の申し子とも言えるのが、冒頭でも掲げたGAFA。
 各社微妙にそのビジネスモデルは異なりますが、共通しているのは我々の個人情報をうまく吸い上げ、その加工データを扱うことが各社の企業価値の源泉となっていること。AmazonやAppleは実際の商品や製品を扱っているのではとの疑問も起こりますが、前者はあくまでも販売の場の提供であり、後者は自社では製品そのもの製造は一切行っていません。よって非常に時価総額の高い企業ながら、それに反し実に身軽な企業体であり、本社をどこに置こうが、あまりその収益構造に影響を及ぼすことがありません。

 残念ながら現行の各国税制は、こういった新しい企業体に際し全く有効な課税方法を見出せていません。特にGAFAの台頭に危機感を募らせるEU諸国ではOECD(経済協力開発機構)主導で新しい課税方式の検討が盛んに行われるものの、そもそもアイルランドやオランダなど、OECD参加国ながらタックスヘイブンと同じ機能をもつ国もあり、なかなか一枚岩の施策がとりにくいこと。またトランプ政権以降、ややもすれば保護主義の強まる米国では、こうった企業を擁護するスタンスも見え隠れしていることなどが紹介をされています。
 それでも2020年から英国ではデジタルサービス税の導入が予定されており、今後各国が追随する可能性もありますが、その有効性の立証はこれからなのでしょうね。

 租税回避のもたらす影響は、当然税収の減少もありますが、そもそも税というコストが少なければ少ないほど収益性も高く競争力もあるわけですから、対等する企業が生まれにくく独占を許し消費者に不利益をもたらす結果にもつながりかねません。
 独占を禁止するため企業分割など、事業規模を抑え込む施策もあるでしょうが、冒頭で述べたように、これらの企業価値の主たるものは無形資産であり、そもそも分割という概念が馴染むのかとの疑問も残りました。

 本書前半に関する所感が中心となってしまいましたが、特に個人の働き方や所得、格差拡大に及ぼす影響という点からは、むしろ後半部分の方が我々にとってはより切実な問題かもしれません。

 タイトル的に手にするのを敬遠しがちな類の書籍ですが、決して難解ではなく法人個人問わず幅広くデジタル経済のもたらす影響を税という観点からみた本書。
マイナポータルなど今後我々に直接影響のあるテーマもカバーしており興味深い一冊でした。



                   日本経済新聞出版社 2019年4月16日 1版1刷