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 GWもそろそろ終わりですね。
いわゆる自己啓発の類の書籍は基本的に取り上げない本ブログですが、この著者の書籍は別格かと。
 10連休明けリスタートに相応しい1冊をご紹介させていただきます。

【概要】

 

 「能力を磨く?」
 今更なにをと思いがちなタイトルですが、著者もそれは十分意識されており、冒頭で改めて「能力を磨く」について触れる理由として下記の3つを挙げています。

 ①能力の急速な陳腐化 ②学歴社会の崩壊 ③AI時代の到来
この中で最も大きな理由として挙げているのは「AI時代の到来」。「AI失業」を扱った書籍や雑誌は数多くありますが、その大半は今後淘汰されていく職業について言及しているのみで、具体的に我々はどう対応していったらよいのかに触れているものは、ほとんどないのだと著者は説きます。
 
 本書はそんなAI時代に活躍する人材に問われる能力について考察をした1冊。
本書副題にあるように、3つの能力に集約をしてその磨き方につき解説をしています。

【構成】

 序話、終話(本書では章ではなく、話としています)除き5話で構成された本書。
第1話はAI時代到来が我々にもたらす影響と衝撃について触れ、第2話ではその前提となる学歴社会崩壊の実体について言及しています。
 残り3話では、著者が説く3つの能力につき、1話ずつを割き詳しく解説をする構成となっています。

【所感】

 さて気になる3つの能力ですが、その前段として現代の様な高度知識社会で求められているものには以下の5つの能力があるとしています。

 ①基礎的能力(知的集中力と知的持続力)
 ②学歴的能力(論理的思考力と知識の習得力)
 ③職業的能力(直感的判断力と智恵の体得力)
 ④対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力)
 ⑤組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)

 そしてAIが人間の能力に比べて圧倒的な強みを持っているのは以下の4点 

 ①無制限の集中力と持続力 
 ②超高速の論理的思考力 
 ③厖大な記憶力と検索力 
 ④分析力と直観力

 つまり先ほど挙げた5つの能力のうち①の基礎的能力と②の学歴的能力、そして③の職業的能力の一部においては、もはや人が敵うことはないということ。そして特筆すべきは人に比べ圧倒的に安いコストでこれらの能力を発揮すること。
 ならば我々の伸ばすべき能力は何かと問われれば、それは ③の職業的能力 ④の対人的能力 ⑤の組織的能力という3つの能力を磨くことに他ならないと著者は指摘します。

 3つの能力を磨くポイントについて

 職業的能力においては、同能力は「技術」と「心得」であると理解をすること。書籍などで知った知識と自らの経験で会得した智恵を明確に区分すること。経験は体験にまで昇華させて初めて意味をもつため、内省する時間をもつことが必要な点などを挙げています。そしてその体験的智恵を伝承する重要性についても触れています。
 また人がAIに勝るとされている知的創造力についても、創造や発想する能力すらやがてAIに追いつかれてしまうため、人に残されるのはそれを実現する能力であると言及をしています。

 対人的能力においては、非言語的コミュニケーションが重要であり、その能力を高めるためには会議や会合のあとに、振り返りを行い参加者の様子や言動につき推測や想像をしてみること。
 また共感力を高めることの重要性にもふれ、これは自らの思いや考えに共感してもらうことではなく、自らが相手に深く共感することであり、そのためには様々な苦労を経験することの必要性を説いています。

 組織的能力は、大きくマネジメント力とリーダーシップ力から成りますが、単なる管理としてのマネジメントはAIの得意領域であるため、共感協働のマネジメント、働きがいのマネジメント、成長支援のマネジメントが重要であること。マネジャーはカウンセリングやコーチングが必要となりますが、そのためには単に聞く力でなく、聞き届ける(深く聴く)力が大切であることを強調しています。

 またリーダーシップにおいては、信念をもって魅力的なビジョンや志を語る力、誰よりも強く成長への意欲を持つ力、メンバーのもつ可能性を深く信じる力を挙げています。
そして権限で人を動かしたり、どのように人心を掌握するかという操作主義に長けることなく、メンバー各人に対し敬意をもって接することの重要性を説いています。

 以上、端的にまとめてみましたが、3つの能力は個々が独立したものではなく、複合的融合的に磨かれ発揮されるものであること。全ての能力に共通するのは人に関わることであり、その会得には内省と自身の心の持ち方がいかに大切であるというのが著者の主張ではないでしょうか。

 能力の磨き方とあり、分かり易いノウハウめいたものを期待して読むには不向きかもしれませんが、読まれれば誰でも必ずや琴線に触れる部分があるのではないでしょうか。

 実は著者は、AI失業しないための能力開発を企業に期待してはならないと警鐘を鳴らします。もはやどの企業にもそんな再教育を施す余力はなく、また資本の論理によれば企業はより合理的な判断をするものであり、低コストで利用できるAI技術があれば、ためらいなく人を排除していくと記しています。そのために自らが危機意識をもち、自身で能力開発に勤しみAI失業に打ち勝つ人材を目指すこと。
そんな覚悟をもつことを我々に促し、そんな一助になればとの思いが本書執筆の動機のようです。 
 


                   日本実業出版社 2019年4月20日 初版発行