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【概要】

 

 本年4月に創業から20年を迎えたマネックス証券。
本書は創業者にして現在もマネックスグループ代表執行役社長CEOを務める松本大氏の手による1冊。
 いくつか書籍を上程されている松本氏ですが、本書は「いつか書きたい」「いつ書こうか」と思っていた「お金」がテーマだそうです。
 マネックス創業前を含めて30年以上、金融の世界に身を置いてきた著者が気づいたことは、お金は「信頼」「価値」「想い」の3要素で説明をすることが出来るということ。
 そんな「お金の正体」を皮切りに、お金を取り巻く様々なテーマについて私論を綴ったのが本書です。

【構成】

 10のchapter(本書では章でなくchapterと表しています)で構成された本書。chapterのタイトルは全て~の正体と記されています。
前半は、本書タイトルでもある「お金の正体」の3要素について順に記したあと、消費、預金、投資について触れ、後半では仮想通貨、金融、証券会社をテーマとし構成されています。

【所感】
 
 お金の正体の3要素と聞いて、「信頼」「価値」については誰でもなんとなく想像がつくことと思います。この3要素で著者が本書で一番主張したいのは「想い」ではないかとの印象を受けました。

 失われた30年と言われ、経済的にはあまり芳しくなかった印象がある平成の時代ですが、それでも個人の金融資産(主たる構成は預貯金)は積み上がり1,900兆円に迫っている現在の日本。

 しかしいくら残高を積み上げたところで、少しも幸せそうに見えないのが日本人だと著者は指摘します。なぜならそこには「想い」がないから。
 自身が一生懸命稼いだお金なのに、何の考えもなく単に預貯金に預けっぱなしというのは、そのお金の使途を金融機関にまかせっきりで、どう利用してほしいかという自分の意志がないということ。

 またこと消費においても、「みんなが持っているから」「みんながそうするから」「誰々かがいいと言っているから」そんな理由で行われる消費には、自身の想いはこもっておらず、いくらお金を使ってみたところで満足感は得られないのだとも指摘をしています。

 元々松本氏がマネックス証券を創業したのは、個人を対象にした証券会社を作りたかったことが背景にあります。その目的は日本人の金融リテラシーを高め、預貯金以外の資産運用に関心をもち実際に投資をしてもらうこと。
 ご本人は、まだ道半ば(日本人の投資意識を変えていくこと)と語っていますが、このような形で「想い」を説くのは、応援したい企業の株式を保有するとか、自らが関心をもってお金を預けてほしい。すなわち積極的に投資の意識をもってほしいとの願いであり、そういう意味では創業からの氏の思いは一貫していると言えるのかもしれませんね。

 昨年、仮想通貨交換業者のコインチェックを完全子会社化したマネックスグループですが、本書後半の仮想通貨について触れたchapterでは、その可能性につき政府や国家の裏付けなく流通する貨幣であり、まさに新しい時代の「信頼」と「交換」を具現化するものであること。また技術的に使途などの意志を持たせることが可能な点で、その将来性を高く評価しています。

 端的に言ってしまえば、本書は投資への誘い、仮想通貨への関心の醸成であり、当然ご自身のビジネスへの影響を意図して記されていますので、そのあたりは好みの分かれるところですが、ご本人も試論(私論)と記されている通り、一つの考え方として受け止める分には参考になる点も多いのではないでしょうか。

 個人的には「預貯金の正体」というchapterで触れている日本人がなぜ貯金好きかという私論が興味を覚えました。
 島国であるため欧米に比べ、領土を広げるなど基本的に拡大志向にないこと。また先祖伝来の古いものを大切に維持していこうという意識があること。よってそもそも投資をし財産を増やそうというよりも、今あるものを失わないようにしたいとの意識が強く元本保証という預金は、一番日本人の気質に合っていること。また元本保証を信ずるに値する国家の安定があってこそとの指摘は納得感のあるものでした。

                        宝島社 2019年4月26日 第1刷発行