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【概要】

 

「10年後、地方銀行の約6割は最終赤字になる。」
2019年4月17日に発表された日銀の金融システムリポートには、そんな衝撃的な報告が記されていました。
 また金融庁の試算によれば、現時点でも地方銀行の半数以上は営業赤字であり、東北・九州などの23県では一行独占でも不採算であることも指摘されています。

 日銀・政府が揃ってその存続に警鐘を鳴らす地方銀行。マイナス金利政策の影響もありますが、より切実な問題は人口減と地方経済の停滞、そして過当競争という「構造要因」。

 地方銀行含め地域の金融機関の現場はどうなっているのか。そしてどうあるべきなのか。
雑誌、週間エコノミストの連載記事を元にまとめられた1冊です。

【構成】

 7章で構成された本書。
連載記事が元になっているせいか、独立した章立てにしタイトル付けはあるものの、内容は入り混じっており少々読み辛い面は否めません。唯一信用金庫・信用組合の取組を取り上げた第6章のみが、個々の金融機関ごとに1節をとった構成となっています。

【所感】

 地銀消滅と言いつつ、地銀の事例として大きく取り上げられているのは、社会問題化したスルガ銀行と、三重銀行(三十三フィナンシャルグループ)の事例程度。

 地域経済の雄であった筈の地方銀行が、地域経済を活性化させるという使命を忘れ収益機会を求め他地域や都市部へ越境。
 進出地域の企業特性など保有情報も少ないため、いきおい競争の源泉は低金利融資。はたまたスルガ銀行に見られるような、甘い与信で不動産ディベロッパーなど特定企業へのいびつな肩入れ。結果、自行の存在意義を見失い迷走。業界再編も遅々として進まず、徐々に窮地に陥りつつある。

 一方対峙して描かれるのが、地域の信用金庫や信用組合の取組。
地方銀行の様に営業エリアの拡大等は困難なため、改めて地域密着に舵をとり地域経済振興に向け地道な取り組みを続ける中で、成果を上げつつある。

 というのが本書の概ねの論調でしょうか。

 金融業界を取り巻く環境変化の解説。取り上げられている信用金庫・信用組合の事例は興味深いのですが、冒頭で記した通り肝心の地方銀行に関する取材事例はほとんどありません。
 地方銀行経営の無策ぶり批判、信用金庫・信用組合の過度の礼賛という印象が強く、個人的には肩透かしの感がありました。
 少なからずの地方銀行でもユニークな取り組みが行われていますし、狭い地域で低金利競争をする信用金庫の事例も伝え聞きます。またフィンテックやブロックチェーンといった新しい金融の仕組みがもたらす影響などはほとんど触れられていません。
「衰退の真実」を謳うなら、より多面的な視点からのアプローチが欲しかったというのが正直な感想でしょうか。少々残念な印象を抱いた1冊でした。

              株式会社PHP研究所 2019年5月10日 第1版第1刷発行