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【概要】

  
 今や中高生でも知っていると言われる「サブスク」こと「サブスクリプション」。
 本来のsubscriptionには(雑誌の)「予約購読」「年間購読」という意味があるそうですが、そこから転じ、製品やサービスを一定期間利用することに対して代金を支払う方式のことを指すことが一般的となっています。

 「ネットフリックス」や「スポティファイ」、「アップルミュージック」や「アマゾンミュージック」といったデジタル系のサブスクリプションがよく知られていますが、最近はこういったデジタル系だけでなく、モノ系のサブスクリプションも増加傾向にあります。

「所有から利用へ」

 消費者のお金の使い方が変わる中、サブスクリプションを志向する企業も少なくありません。定額課金で安定的に収入の得られるビジネスモデルは非常に魅力的に映る反面、定額課金という表層面だけに着目して参入しても、うまくはいかないと著者は警告を鳴らします。

 そこで必要なのが本書タイトルでもある「つながり」。
「つながり」とはユーザーとの関係性であり、その強さがサブスクリプションの成功を左右します。そして問われるのは真に企業が「ユーザーに寄り添っているかどうか」。

 本書は、そんな「つながり」が不可欠な時代に、どうすれば収益を生み出すビジネスモデルがつくれるかを考察した1冊となっています。


【構成】
 6章で構成された本書。サブスクリプションを含む定額利用サービスを包括して「リカーリングモデル」と称しますが、前半3章では、リカーリングモデルが着目される理由やそのバリエーション。そして課金や利益確保の方法を解説しています。
 後半3章では「つながり」の強化や可視化。「つながり」の有効な切り口である「メンバーシップ」について触れています。また「でんかのヤマグチ」「セールスフォース・ドットコム」といった成功企業のビジネスモデルについて詳しく解説し「つながり」の育み方について言及しています。

所感】

 まずは秀逸なのが、本書裏表紙に描かれた「リカーリングマップ」。
 縦軸に継続の拘束力、横軸に利益回収の時間をとったチャートに「リピーター」「レーザーブレイド(剃刀の交換刃や、プリンターのトナー販売)」「リース」「フリーミアム」「サブスクリプション」といったビジネスモデルを配置をした図表ですが、本書の意図するところを端的に表すとともに、この図表を紐解きつつ、従来のビジネスモデルとサブスクリプションの違いを分かり易く解説しています。
 また従来の売り切り型モデルに限界を感じサブスクリプションを志向する企業に対し、収益性のいたずらな追及や、安値安定の罠に陥らないよう、必要利益の考え方や確保の方法にもアプローチをしています。
 一見安定的な収入確保の可能性に目を奪われがちですが、特にモノ型サブスクリプションでは先行的な投資が不可欠なこと、またユーザーの意思決定いかんで大きく収益が左右されることから、初期投資においては内部留保で行うことを推奨するなど慎重な取り組みを促します。

 その上で説かれるのが「つながり」の重要性。

 販売後のユーザー登録やアフターフォローを通じ、顧客と「つながり」があると認識している企業は少なくないようですが、そういった事後的な対応で築かれた「つながり」は脆弱なものです。
 強い「つながり」のためには顧客への積極的な対応が不可欠であり、絶えず顧客の生活をアップデートする提案をするためには徹底したユーザー目線が大切であること。そのためには「つながり」の強弱の可視化が重要であり、そのための「ユーザーの活動チェーン」というフレームワークも紹介されています。また「つながり」も一つの経営資源であり、いたずらな浪費ではすぐに枯渇をしてしまうため、増強をする手立てについても考察されています。

 全編通じ丁寧な解説で記されたサブスクリプションというビジネスモデルと、その前提となる「つながり」の重要性。非常に示唆に富んだ内容であり、業種を問わず今後のビジネスを考える上では必読の1冊と感じた本書。
 
 本書を読み、個人的に今後のビジネスの要諦は「先回り」ではないかと考えました。ユーザーの先回りをし、絶えずユーザーが解決したいジョブへ積極的にコミットしていくこと。
 それを現時点で最も効果的に実現できるのが、サブスクリプションというビジネスモデルであり、特に親和性の高いデジタル系の台頭が目立っているだけのこと。

 今後も様々なビジネスモデルが登場してくることは想像に難くありませんが、絶え間ない「先回り」発想で顧客へ対峙する姿勢と「つながり」を強化し続ける意識を持ち続けること。その重要性を改めて認識されてくれた1冊でした。

                       東洋経済新報社 2019年6月20日発行