2019- 6-23 Vol.313IMG_4127

【概要】

  
 京都は西院にある国産牛ステーキ丼専門店、佰食屋。https://www.100shokuya.com/
 営業時間は11時~14時30分。基本メニューは3種類で、値段は1,080円~1,188円。毎日100食限定で売り切ったら閉店。従業員の残業時間は0。なのに給料は百貨店並み。
 そんな常識破りの飲食店を経営するのは、株式会社minitts。代表取締役は二児の母でもある中村朱美さん。
 
 京都女性起業家賞、京都市「真のワーク・ライフバランス」推進企業賞、経済産業省ダイバーシティ経営企業100選選出と表彰歴も多数。メディアにもよく取り上げられるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
 
 なぜこのようにユニークなビジネスモデルが生まれたのか。本当にこんな常識やぶりの飲食店がやっていけるのか。多くの人が抱くそんな疑問も踏まえ、佰食屋経営の秘密を余すところなく明かしたのが本書です。

【構成】

 5章からなる本書。1章では佰食屋誕生の経緯を。2章では佰食屋経営の肝とも言える100食限定の「制約」が生んだメリットについて触れています。3章~4章では売上数値や原価率など、同社の実態を余すとこなく開示。最終章の5章では同社の新しい業態、佰食屋1/2の紹介と今後の展開について記し結ばれています。

【所感】

 同社誕生の発端は、中村さんの出産。二人目のお子さんが障害をもって生まれたこともあり、育児をしながら働くために考えたのは自営。ご主人の将来の夢であった飲食店経営を前倒しで実現すること、ご主人の手料理であったステーキどんぶりで勝負をすることを決意します。
 元手は500万円。100食どころか20食を売るのが精一杯の日々。それでも商品に妥協せず真摯に営業を続けた結果。ある方の書いた1本のブログからお客様が押し寄せるようになります。
 オープンして3ケ月。ついに100食完売を達成。経営も徐々に軌道の乗ったことから、思い切って夜の営業を完全に廃止してしまいます。その後、すき焼き、肉寿司専門のお店を各々1点ずつ構え、現在に至ります。
 
 100食という制約は、同社にこんなメリットをもらたしたそうです。

 ①早く帰れる       →たった一つの目標だからモチベーションが高まる。
 ②フードロスはほぼゼロ  →原価低減、労働時間短縮
 ③経営が究極に簡単になる →圧倒的な商品力の実現。広告宣伝費を原価に上乗せ
 ④どんな人も即戦力になる →やる気に溢れる人はいらない。いまいる従業員に合うのが大切
 ⑤売上至上主義からの解放 →やさしい働き方の実現

 仔細はぜひ本書をご参照いただきたいと思いますが、実に興味深い実態が記されています。
 おおよそどんなビジネスでも制約条件はあるもの。
その制約条件をどう乗り越えるかが、経営のノウハウと言えるのでしょうが、自ら売上に制約をかけるケースはまずはありませんよね。
 人件費や家賃、黙っていてもかかる固定費。ならば少しでも長い時間お店は明けていたい、売上を伸ばしたい、利益を出したい。誰でもそう考えるのが当たり前のところを中村さんは断固否定します。

 何のために商売をするのか。中村さんはお客様のことだけを大切にするのではなく、従業員を大切にすることだと語ります。「明るいうちに仕事が終わって帰れたら、幸せだよね」
 そんな幸せを従業員みなに享受してもらうために、売上に制約を設ける決断をしたそうです。
毎日100食という明確なゴールがあることがもたらすメリットは前掲した通りですが、普通の感覚であれば100食は必達の上、それをどれだけ越えれるかいう発想をしがちですが、そこをあえて目指さないところから組み立てられたこのビジネスモデルには、驚かざるを得ません。

 本当にそれで、経営を続けていけるのか、社員の給与は上げれるのか。そんな疑問にも包み隠さず回答が記されており、好感を覚えるとともに、中村さんのゆるぎない自信を垣間見た思いがしました。

 さてそんな同社が、今後展開を考えているのは佰食屋1/2という業態。なんとこれは50食限定のお店。しかも今後はそのFC展開を考えているそうです。ただ展開したいのは、商売のFCモデルではなく働き方のFCモデル。どんな広がりを見せるのか。今後が楽しみですね。

                      ライツ社 2019年6月17日 第1刷発行