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【概要】

 マザーハウス https://www.mother-house.jp/ という会社をご存じでしょうか。2006年創業。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をミッションに、バングラデッシュ、ネパール、インドネシア、スリランカなどに工場を構え、日本国内29店舗の他、台湾、香港、シンガガポールに直営店舗を構えます。

 扱う商品は、ジュート(麻)やレザー製のバッグ、ジュエリーなど。本書著者は、同社代表取締役にしてチーフデザイナーでもある山口絵理子さん。

  25歳で起業。またそのユニークなビジネスモデルからメディアの注目度も高く、既に書籍も何冊も上梓されています。本書はそんな山口さんが大切にしている「サードウェイ」いうと考え方についてまとめた1冊。サードウェイとは「相反する二軸をかけ合わせて新しい道を創造すること」と山口さんは定義をしています。

 世の中すべてのものごとには二つの軸が存在し、往々にしてその解決には、どちらかを取り、どちらかを捨ててしまうか、あるいは足して2で割るような妥協点が見出されてしまいます。答えは本当にそれだけなのでしょうか。
 選択でも妥協でもない第三の道。そんな道の見出し方を、自身の実体験を踏まえ綴った内容となっています。

【構成】

 5章で構成された本書。
 社会性とビジネス、デザインと経営、個人と組織、大量生産と手仕事、グローバルとローカルといった5つのテーマに1章ずつが充てられています。各章ごとの巻末にポイントを整理したまとめがついています。

【所感】

 学生時代にバングラディシュを訪問したことが起業につながった山口さん。この国のことを知りたい。この国の役に立ちたい。そんな思いが彼女を駆り立てます。それは単に貧困国での経済支援のお手伝いをしたいといったレベルの話ではなく、途上国で仕事を生み出すことはもとより、そこで生み出された商品を東京をはじめ世界の先進国で通用するレベルにしたいというもの。
 
 途上国で作られた商品だから、安かろう悪かろうではなく、きちんと一つのブランドとして成り立たせ、他のハイブランドと遜色ない勝負が出来るビジネスがしたい。
 そんな社会貢献とビジネスの同立を意図した起業の時から、サードウェイを探る彼女の旅は始まったのかもしれません。創業から13年。様々な経験を通じ、誰からも搾取をしない、たずさわる人皆がハッピーになれるビジネスは可能なのだと確信をされています。

 その上でビジネスはきちんと利益を上げなければいけないし成長しなければならないとも記しています。なぜなら経済力をもつことはより社会を動かす大きなインパクトにつながるから。
 そのために必要なことは、大きなビジョンをもつこと。でも実践に際しては、それを小分けにし進捗を定点観測すること。新しい夢が生まれたら、どんどん追加していくことなどの重要を説き1章は締目くくられています。

 以降の章も同等に、自身がデザインもしつつ経営者であることに限界を覚え、経営者の立場から離れようと悩みつつも活路を見出す様子を記した2章。皆が帰ってきたくなるような家庭的な職場を作りたいと奮戦する3章など、示唆に富んだ内容で展開されています。

 国内での起業ですら簡単なものではなく、ましてや海外それも発展途上国でのビジネス展開の困難さは想像に難くありませんが、常に課題に対し安易に妥協することなく考えようとする彼女の姿勢とバイタリティが、同社の成長を促してきたことは間違いなさそうです。

 巻末で、自身の存在や自身の活動はマイノリティであると語る著者。それでもマイノリティゆえ(途上国などの)世界のマイノリティと手を組んで、国際部隊でマジョリティと闘いたい。従来の優劣の評価枠に収まらないマイノリティメジャーを追及したいと結んでいます。そんな熱い思いのこもった1冊。経営者の方のみならず、多くのビジネスパーソンに勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
 


              ディスカバー・トウエンティワン 2019年8月15日 第1刷