2019- 9- 8 Vol.324IMG_4327

【概要】

 縄文型ビジネス?
 人を食ったようなタイトルの本書ですが、内容はなかなかどうして。
 グローバル化の進展、テクノロジーの進化により、昨今のビジネス環境の変化は著しく、策定した事業計画やビジネスモデルがあっと言う間に通用しなくなってしまうケースも少なくありません。

 これまでの管理型経営では太刀打ちできない局面を迎えつつある中、これからの企業経営はどうあるべきなのか。そのヒントを歴史に求めた著者。

 歴史をさかのぼること令和から平成、昭和。更にさかのぼれば、平安から奈良、飛鳥、古墳、弥生と我々はずっと時の権力者が富を吸い上げる社会構造の中に生きてきたと説く著者。しかし弥生時代より前には、おおよそ1万年(約1万5000年前から紀元前10世紀頃まで)続いたと言われる縄文時代があります。

   縄文時代には、大きく5つの特徴があったそうです。①ムラが生まれ定住生活が始まったこと ②自然が広がるハラと共存共生をしたこと ③多種多様な食物を組み合わせて生活をしたこと ④自然の声を聞いてコトバを発達させたこと ⑤縄文土器に世界感を表現したこと   
 端的に言えば、自然に逆らわず、必要以上の採取はしない。ゆるやかなつながりとコミュニケーションを大切にし、独自の価値観をもつといったところでしょうか。

 縄文時代と弥生時代以降を決定的に変えたのは、稲作の登場。採集経済の時代ともいえる縄文時代から、弥生時代以降は、稲作の普及で計画的に稲をつくり食料の安定化を図ることが目されます。米は保存が可能なことから「富の蓄積」を生み、やがて首長と呼ばれるリーダーが誕生し、社会の階層化が進みます。また更なる食料の安定を求め耕作地の拡大が図られ、部落やムラ同士での争いが始まりました。まさにこれは現代でも見られる構図でもあります。

 本書は、そんな縄文時代と弥生時代以降の社会の比較を、企業経営に置き換えて捉えた一冊。弥生時代とは一線を画す縄文時代の社会から、現代の経営に活用できるフレームワークを見出し提言をした異色の内容となっています。

【構成】

 6章で構成された本書。1章では著者が本書の発想を得た経緯や縄文時代と弥生時代以降を端的に比較しつつ、縄文型とも言えるビジネスモデルを提唱。その実践に必要な原則を4つ取り上げ、以降の章で一つずづ解説をしています。
 終章の6章では、縄文型と弥生型の二つをバランスさせる重要性が説かれ締めくくられています。

【所感】
 
 稲作誕生以降を弥生型モデルと呼ぶなら、それは企業が利益の最大化を求めることに最適化したビジネスモデル。一方狩猟や採集が基本の縄文型モデルは、企業が地球と共存共生することに最適化をしたビジネスモデルではないかと著者は推測をします。

 他社との競争に打ち勝つため、合理性や効率性を追求し、進捗や数値管理に重きが置かれる。外部環境は著しく変わっているのに、与えられた計画の遂行に汲々とし、気づけば事業そのものの前提が変わってしまっていることも知らず、虚しい努力を続けていた・・・・・
往々にして、そのような事態は、どんな企業や組織にも起こり得ることなのではないでしょうか。
 そんな状況を打破する一助になるのではと、著者が提唱するのが縄文型ビジネス。縄文型ビジネスを目指すには、4つの原則があると著者は説きます。

 ①事業計画を手放す・・・・・・・・・ビジネスモデルを持って直感的に動く
 ②他社との競争から脱却する・・・・・全てのステークホルダーと協業する
 ③コンプライアンス偏重を見直す・・・既成概念にとらわれず新しい価値を創造する
 ④リターンへの期待をやめる・・・・・ご縁とともにビジネスを紡ぐ 

 独創性を尊重し、臨機応変に対応をしていく。多くのつながりをもうけ、win-winの関係をたくさん作る。短期の付利は追わず、長期的かつ持続可能な成長を目指す。個人的にはそんな理解をしましたが、皆さまはどうお考えになられるでしょうか。

 そんなの理想論に過ぎないとの意見もあるかもしれません。
そのあたりは著者もきちんと押さえており、実際に縄文型ビジネスに近い事業展開をしている事例も紹介されていますし、そのエッセンスを分かりやすく説明するために、あえて極端に縄文時代をデフォルメ化している様子もうかがえます。

 終章で語るとおり、弥生型ビジネスと縄文型ビジネスをバランスよく取り入れることが重要であるとし、単にエキセントリックな提言でなく、実行可能性の高い提言であることに好感を覚えた次第です。

 考えに詰まったら、時代を変えて考えてみる、地域を変えて考えてみる、立場を変えて考えてみるという手法はよく知られていますが、大胆にも縄文時代までさかのぼって着想を得た本書。視点のユニークさが光る一冊でした。

                   日本経済新聞出版社 2019年8月22日 1版1刷