2019-10- 6 Vol.328IMG_4402

【概要】

 インターネットや人工知能に代表される第四次産業革命。大規模なパラダイムシフトが起こる中、社会的使命を終えた企業は規模の大小を問わず消えていってしまう。一方社会的責任を負った企業は、例え規模は小さくても世界で活躍できる可能性がある。
 これからの産業界では、むしろ小回りのきく中小企業のほうが有利になる可能性が高い・・・・・。そんな書き出しで始まる本書。

 これから活躍できる中小企業には5つの指針が必要だと著者は説きます。
 ①生産性の再検討 ②イノベーションへの関与 ③情報の輪への加入 ④大企業妄信からの脱却 ⑤世界への飛翔

 特に重要視すべきは「情報の輪」への加入。そして大半の中小企業はこの「情報の輪」への加入がほとんど出来ていないと説きます。

 その理由を著者は地勢図になぞらえ、中小企業は、その住む地域がMSDS山脈によって囲まれてしまっているからだと説きます。MSDS山脈とは M:モラルハザード(さぼり癖) S:サンクション(いじめ) D:ディストーション(歪み) S:サスピション(疑い)の頭文字をとったもの。
 
 本書は、そんなMSDS山脈を乗り越え、世界へ飛び出そうとする中小企業のための指南書。リサーチ会社を経て、日本の中小企業の海外事業展開に特化したコンサルティング事務所を主宰する著者の手によるものです。

【構成】

 序章、終章含め全7章からなる本書。
成功企業の事例を紐解きながら、著者の提唱する5つの指針の重要性や、MSDS山脈がもたらす影響について解説をしながら、いかに「情報の輪」へ加入していくのか、そしていかにその輪を広げていくのかについて考察をしています。

【所感】

 本書におけるキーワードは「情報の輪」
「情報の輪」に加わるためには、①エンドユーザーとつながり情報に直接アクセスする ②オーソリティ(権威者)の力を借りてアクセスする ③「海外」の力を利用してブーメラン効果を得る などの施策が考えられるそうですが、成功企業に共通するのは「勇気」と「粘り強さ」そして「負けん気」をもって積極果敢に攻め込んでいっていること。

 また単に「輪」の中に加わるだけでなく、「輪」を広げる努力も欠かせないと説きます。
そのために必要なことは、イノベーションを通じた生産性の向上であり、自社が提供出来る価値の見極めと陳腐化させない工夫。また正当な評価をしてくれる取引先とつきあうことやニッチな市場であっても自社が業界標準となるような働きかけの重要性が記されています。

 特定の顧客に依存した下請け状況から脱したい。自社独自の製品やサービスで高付加価値を得たい。それを願わない中小企業は皆無ではないでしょうか。

 その一方、人口減少、市場の縮小、需要の減少と今後の日本経済に明るい要素は乏しく、このまま日本国内に軸足を置いていては、これまでのしがらみからの脱却は難しいのも事実。
 今こそこの状況を真摯に受け止め、世界に打って出る気概をもたなければ、大半の日本企業は座して死を待つだけだと著者は警告を鳴らします。

 ただ世界に打って出るというのは、何も自社が直接海外に出向くのみならず、例えば知財の分野では海外企業を日本に引き込み連携していくクロスボーダー・アライアンスの様な方策も考えられるのではないかとの指摘もしています。
 
 そうは言われても、具体的にどのように進めればいいのか分からないという方に向けて、本書終章では中小企業が海外事業を考える中で比較的現実的な、このクロスボーダー・アライアンスの進め方を解説しています。まずは本編の前にここを読み、その後前提となる前章を順に読んでみるのも、本補に対峙するには良いかもしれません。


                  日本経済新聞出版社 2019年9月18日 1版1刷