2019-11- 3 Vol.332IMG_4466

【概要】

  平成から令和へと元号が変わり、平成時代を振り返る書籍が多数出版された本年。失われた30年と揶揄される日本経済を扱ったものも少なくありません。
 本書は、今年創刊50周年を迎えた週刊経済誌「日経ビジネス」で本年上期に連載された記事を元に構成された1冊。

 失われた30年どころか、その20年前、1970年代から日本は何にも変われていないと記す著者が、日本経済の50年を振り返ります。
 
 変われなかった日本のターニングポイントは1973年。同年のオイルショック、為替の変動相場制移行という大変動により20年近く続いた高度経済成長が終焉を迎えた年でした。
 以降大半の企業は、人件費や新規採用、設備投資の抑制といったコスト削減と多角化へ邁進します.
拡大均衡よりも縮小均衡を図り、リスクは負わず多角化による安全志向で、現状を乗り切ろうとするとする「縮み志向」。
日本人はいまだにそんな思考法や行動様式から脱していないのではないか? 
 そんな検証とそこからの脱却について考察をしています。

【構成】

 全5章で構成された本書。第1章では、70年体制はまだ終わっていないとする根拠について言及。第2章では日本のリーダー、第3章では企業、第4章では日本国そのものについて、何を変え、何を変えることができなかったかを再検証しています。終章の第5章では2010年以降を振り返り、日本が復活するためには、何が必要なのかを考察しています。

【所感】

 経済のみならず政治や社会問題も交え、50年を振り返った1冊。編集の都合上か必ずしも時系列に構成されている訳ではありませんが、石油危機、変動相場制移行、土地神話、貿易摩擦、バブル経済、金融危機、インターネット台頭、格差拡大といった切り口の他、国・地方の巨額累積債務、年金改革、農業改革、選挙制度など多岐なテーマに渡ります。

 取り扱う範疇の広さ、雑誌記事を下敷きにしているため内容の浅さは否めませんが、それでも50年間を一気に俯瞰してみたことは非常に興味深いものでした。
 著者の主張は、結局この50年、日本は様々な局面で大きな変革を迫られたにも関わらず、対処療法的にやり過ごしてしまったことが、日本の低迷を引き起こしてしまったというものですが、一概にそれは言えないのではないかというのが正直な印象です。

 国民性なのか、他国に比べ共同体意識が高いと思われる日本では、やむを得ない選択だったと思わざるを得ない場面も数々見られます。
 結果、経済は停滞したかもしれませんが、比較的安定感は強く生活の不安の少ない社会を維持出来たという側面もあるのではないかと思います。

 それでも、日本経済停滞の大半の原因は「人災」であったとし、1999年の派遣労働法改正を挙げている点は大いに納得できるものでした。正規雇用を非正規の派遣労働者へ切り替え、固定費削減で景気後退時期を乗り切ろうとした、まさに「縮小均衡」志向。これが平均的な国民の所得水準を引き下げ、内需の低迷から経済停滞を更に強めたという指摘。まさにその通りではないでしょうか。積極的な事業展開で雇用を生み出すことなく、投資すら控え内部留保の充実のみを図った多くの企業。

 個人的には、この1999年こそが日本停滞の真のターニングポイントではなかったのか。そんなことを感じた次第です。
 
 過去は覆らないが、過去からは学べる。そんな言葉で締めくくられた本書。どう学び、ここから反転を起こすのか。我々みなに突き付けられた課題かもしれませんね。


                                    日経BP 2019年10月28日 第1版第1刷発行