2019-12- 1 Vol.336IMG_4548

【概要】

 組織や企業を変革しなければならない。目まぐるしく変わる経営環境下において、次なる成長や発展の機会を求め、組織や企業の変革を考えないリーダーは皆無なのではないでしょうか。
 
 どんな企業もそれぞれ自社に固有の文化をもちます。
文化とは、その企業に深く根づいた姿勢や定着した習慣。繰り返される振る舞いや潜在的な感情、共通の世界感などが集まったもの。それは共に働く人々が共有する一揃いの前提であり、互いの暗黙の了解であると著者達は説きます。

 変革に際し、リーダーはこの文化の存在を認識し、積極的に関わることが大切。そのために必要なことは「クリティカル・フュー(少数の重要な要素や行動)」に着目すること。そんな「クリティカル・フュー」を見出し、どのようにアプローチをしていけばいいのか。

 長らく企業文化とその進化に取り組んできた PwCのコンサルタントを主著者に、そんなテーマに迫ったのが本書です。

【構成】
 
 5章で構成された本書。クリティカル・フュー」の要諦をなす3つの項目に1章ずつを充てています。特徴的なのは、架空の小売業イントレピッドのCEOアレックスと本書主著者のジョン・カッツェンバックの対話形式で展開されることでしょうか。
 過去のコンサルティングを通じ得た知見に基づいて展開される本書ですが、守秘義務もあることからこのような体裁をとっているとのことです。各章概ね前半は対話部分。後半は対話部分の解説ととりまとめで構成されています。巻末には、本書に登場する用語集も設けられており、理解の一助となっています。

【所感】
 
 企業の変革には、その企業固有の文化を理解しアプローチをすることが重要というのが本書のテーマであり、そのために必要なことは「クリティカル・フュー」への着目。

クリティカル・フュー」には ①形質 ②行動 ③真の非公式のリーダーの3項目があり、この3つに的を絞り、自社の企業文化を捉えることが効果的であると記しています。

 ①形質・・・・・組織全体に見られる行動の傾向
 ②行動・・・・・ある組織内での個々人の時間の使い方や意思決定のやり方、人間関係のありかたなど従業員が日々「行っている」こと
 ③真の非公式のリーダー・・・・・Authentic Informal Leaders(AIL)肩書きや地位に頼ることなく、人に影響を及ぼし、活力を与える人のこと

 どんな企業でも組織の核となる差別化された特徴があり、それをはっきりさせることから改革は始まると著者達は説きます。そのためには組織のあらゆるレベルの人々と交流し、インタビューを通じ自社の形質を浮かび上がらせること。その中から特に重要な3~5の形質を選び出すこと。
 その際には、それらの形質が、会社の本質を反映しているものなのか。社内全体に共鳴を引き起こすものなのかといった基準を満たすことが重要となります。

 形質にアプローチをするということは、自ずと従業員の行動を知ることにつながります。
次に企業変革に望ましいと思われる従業員の行動にうき、形質の場合と同じようにリストアップをすることを促しています。また策定された行動については、リーダー自らが実践することの重要性を説いています。

 そして最後に着目すべきは、真の非公式のリーダーを見出し、彼らと協働していく努力を惜しまないこと。どんな組織にも組織図上の役割はなくとも、その考えや行動が他者に多大な影響を及ぼすキーマンがいます。着目すべきキーマンのパターンには、プライド形成者、模範者、ネットワーカーなどがあり、その資質の見極めがポイントとなります。

 以上の3点を踏まえ、最後に文化の変化を測定する重要性を説き、締めくくられています。
 本書は、即効性のある改善策やノウハウを提供してくれるものではありません。組織の規模にもよりますが、クリティカル・フュー」にかかる情報を吸い上げ、整理するだけでも相当の工数を要することは想像に難くありません。それでもその教示は非常に腑に落ち、取り組む価値を実感させるものでした。

 企業文化とは、変えるものではなく、本来持っている固有の文化を再度ブラッシュアップすること。理屈で終わらず、具体的な行動に落とし込み、動くことを通じ変革を促す。
シンプルながら説得あるスキームが紹介された1冊。平易で読み易く。お薦めです。

                    日経BP 2019年11月12日 第1版第1刷発行