2020- 1- 5 Vol.341IMG_4651

 新年あけましておめでとうございます。本年も当ブログへのお付き合いよろしくお願いいたします。さて新年のスタートはこんな1冊からです。

【概要】

 ビジネススクール(グロービス経営大学院)で教鞭を執ったこともある著者。ビジネススクールでは企業のケーススタディがしばしば行われますが、そこで取り上げられるのは成功事例ばかり。成功事例はハッピーな話だし、関係者も皆語りたがるため事例になり易い傾向があるそうです。
 反面、失敗事例は責任問題や関係各社との兼ね合いもあり、なかなか語られづらく事例になりにくいから。しかしながら実は失敗事例ほど教訓に富み、我々に気付きを与えてくれるものはないと著者は説きます。

 本書はそんな失敗事例を、分かり易く、親しみやすく整理することにチャレンジした意欲的な1冊。
 日米欧から我々もよく知る企業25社を取り上げています。また図鑑と言う通り、著者自ら事例各社の誕生から破綻までのチャートをイラスト化し挿入するなどの工夫が凝らされています。

【構成】

 25社の事例に1章ずつを充て編集された本書。各事例とも、①どういう会社だったのか ②倒産に至った過程 ③ターニングポイント ④我々へのメッセージ(何を学ぶか)という構成で、概ね8~10ページで分かり易くまとめられています。また全ての事例の末尾には3つのポイントと称し、要点のまとめも添えられています。

【所感】

 紹介されるのは登場順に そごう、ポラロイド、MGローバー、GM、ブロックバスター、コダック、トイザラス、ウェスチングハウス、鈴木商店、ベアリングス銀行、エンロン、ワールドコム、三光汽船、エルビーダメモリー、山一証券、北海道拓殖銀行、千代田生命、リーマン・ブラザーズ、マイカル、NOVA、林原、スカイマーク、コンチネンタル航空、タカタ、シアーズの25社。

 当事者等への直接接触はせず、公開された情報のみを参考に執筆したそうです。これら25社を、まずは戦略上の問題、マネジメントの問題に二分。さらに戦略上の問題を「過去の亡霊」型、「脆弱シナリオ」型に、マネジメントの問題を「焦りからの逸脱」型、「大雑把」型、「機能不全」型と計5パターンに分類しています。
 実際には企業の破綻理由は複合的であり、単純に分類出来るものではありませんが、破綻の真因をうまくとらえたネーミングで、事例の理解の一助となっています。
 
 各事例ともコンパクトにまとめられ、非常に読み易い体裁となっている本書。ゆえに難点は深読みしなくても、わかった気になってしまうことでしょうか。
  個人的には、各事例とも③のターニングポイントに着目し、自身が当事者だったら、どう意思決定するか、どうアクションを起こすかという問題意識をもって読むことをお勧めしたいと思います。
 また本書以外の事例を本書のパターンに落として、整理してみることも、いい活用法かもしれません。

 しかしつくづく思うのは、どの破綻事例も共通するのは結局のところ自社の置かれている前提を疑うことの難しさ。事例企業の大半は圧倒的な成功体験や強烈なカリスマ経営者を有しており、間違いなくそれに依存をしています。
 変化は誰でも避けたいもの。経営環境が大きく変化しても、なかなかそれを認めることが出来ません。また認めることが出来ても何らかの理由づけをし、これまでのやり方で乗り切ろうと安易な考えを抱いたり、誰かがなんとかしてくれるだろうと当事者意識も不足しがちです。

 破綻の流れに乗ってしまってからでは、まず立ち直ることは困難。早目に予兆をつかむ仕組みの構築や絶えない危機意識の醸成。破綻の回避にはそんなことが不可欠であることを改めて認識した次第です。
 手に取り易い装丁。読み易い体裁ながら、示唆に富む1冊。お薦めです。

                    日経BP 2019年12月9日 第1版第1刷発行