2020- 5-24  Vol.361IMG_5006

【概要】
 
 未曾有の経済危機を巻き起こそうとしているコロナショック。その破壊力は、広さ、深さ、長さにおいて、かつてのリーマンショックを上回る可能性が高く我々の生活を大きく揺るがす可能性を秘めています。
 本書は、元産業再生機構COO 現在は㈱経営共創基盤のCEOを務める冨山和彦さんの手による1冊。
 企業再生に辣腕をふるい、数々の修羅場に立ち会ってきた冨山氏でさえ、尋常ではないと語る今回のコロナショック。その危機に個人は企業はどう立ち向かえばよいのか。
100ページ強の薄い1冊ながら、端的にそのことをまとめたのが本書です。

【構成】

 4章で構成された本書。
今後経済危機の起こる順序や、まず行うべき打ち手について記したのが前半2章。今回の危機を一過性で受け止めず、大きく次の飛躍に向け活かすための提言を記した後半2章で構成されています。

【所感】

 冒頭で語られるのは、これから経済危機が起こる順序。
その順序は、L(ローカル)→G(グローバル)→F(ファイナンス)であると冨山氏は語ります。現に一連の自粛モードで一番打撃を受けているのは、地域や地域の中小企業。そしてトヨタなど世界企業が大減産に陥りつつあるように、徐々にグローバル企業にその影響が見え始めています。そしてその次にやってくるのが金融危機。長引く懸念があるのは、GとFそして外需依存型のLだと説きます。特にGの危機をどう乗り切るかが鍵だとしています。

 過去における経済危機の歴史において、同じ業種でも生死を分けたのは以下の4点だそうです。
①手元流動性(現預金)の潤沢さ ②金融機関との従来からの信頼関係 ③平時における稼ぐ力(営業キャッシュフローの厚み)④自己資本の厚み
 決して奇をてらったものではなく、結局平時の備えが有事の際に役立つという話となりますが、まずは早急に①②を高め、当面の危機を乗り切ることが肝要ということになります。

 また今後経営者がもつべき心得として ①想像力(最悪を想定し最善の準備をする)②透明性(会社の現状を明らかにする。信用棄損を恐れない)③現金残高(日繰りのキャッシュ管理)④捨てる覚悟(優先順位の明確化) ⑤独断即決 ⑥タフネス ⑦資本の名人 ⑧ネアカ と8つを掲げており、過去の企業再生の場で得た知見が惜しみなく明かされています。

 冨山氏は、この危機を一過性のものとして受け止めるのでなく、次の飛躍に活かすため、企業の抱える根本的な病巣を根治すべきとも提言しています。それは大企業においては「古い日本的経営」病。中小企業においては「封建的経営」病。
 過去のリーマンショックにおいてもせっかく危機を乗り越えV字回復したものの、その後低迷する企業があとを絶たず、変革の機会をふいにし日本経済低迷を更に長引かせたことに忸怩たる思いを抱いたことが記されています。
 これから変革の要になるのはDX(デジタルトランスフォーメーション)。しかし大半の企業がやっているのはDXごっこに過ぎない。今後は、CX(コーポレートトランスフォーメーション)で会社丸ごとを変えてしまうような覚悟が必要とも説いています。

 また各個人においては、過去の歴史から学ぶ重要性と、この非常時ゆえ積極的に修羅場に身を投じ考え、行動することを強く推奨しています。今後、企業規模や有名無名を問わず企業の破綻は必須。各企業における固有のスキルでなく、どこにいっても通じる真のスキルを身に着ける。いや身に着けなければ、各個人も淘汰されてしまいます。
 修羅場こそ最高の体験の場であり、その機会を逃すことがないように。またそのような人材が多く育つことが、次の日本経済成長に繋がることを期しての提言と言えるのかもしれません。

 薄手でさっと読めるも、示唆多き本書。未曾有の経済危機に立ち向かう気持ちを鼓舞してくれるような1冊でした。 

                        文藝春秋 2020年5月10日 第1刷